2016 年 21 巻 1 号 p. 33-41
来訪者としての大学生による比良山麓の里山暮らしの価値認識を明らかにし,さらに近年の市民活動による自然資源利用の動向をふまえ,里山暮らしに対する価値観と新たな自然資源利用との関わりについて考察した.調査では,大学生147名の「比良の里山の魅力は何か」に関する実習レポートから,里山の価値と関わる用語をすべて抽出した後,用語の意味や前後のつながりから整理,分類し,里山の価値を説明するキーワードや分類軸を検討した.実習レポートの記述の中で出現頻度がもっとも高かった用語は「自然」であった.「自然」のあり方,「自然」との関わりが重要であり,「自然」をどのように利用するかが,里山暮らしの価値の基本となっていると考えられた.また,里山暮らしの価値に関する主な用語は,「昔ながらの」「穏やかな」「豊かな・多様な」「理にかなった・調和した」「つながった」に5区分された.暮らしの場で自らが直接里山の自然,文化に関わることを里山暮らしの価値ととらえることは,来訪者としての学生,市民活動に共通しており,伝統的な要素に新しい要素をうまく取り入れる工夫を加えていくことが,里山暮らしの価値を高めることにつながると示唆された.「昔ながらの」「理にかなった」など5つの指標に結びつく景観構成要素や,生活様式,土地利用を議論,提案することが,これからの風土性・地域性を考慮したまちづくり・地域計画において肝要である.