2015 年 6 巻 1 号 p. 15-23
我が国で最初の人工内耳手術が1985 年に行われてから30 年が経過し,人工内耳装用者数は1万人以上になっている.人工内耳は,補聴器での装用効果が不十分な高度難聴に対して有効であり,人工内耳の装用効果が得られているが,騒音下の聴取等人工内耳の聴こえには限界があり,今後検討すべき課題もある.本稿では,人工内耳のしくみや歴史,人工内耳の現状や問題点を解説し,特に,人工内耳の適応基準の改訂等によって,今後増加が予想される小児の両側人工内耳や人工内耳と補聴器の両耳装用の効果,人工内耳装用児の通常学級へのインテグレーション等に関する検討を行った.さらに,聴覚障害,人工内耳に関わる言語聴覚士の役割について考察した.