日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
日本における地方債制度の構想と創設
天羽 正継
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2020 年 27 巻 p. 59-86

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抄録

 日本の本格的な地方債制度は1888年の市制・町村制によって創設されたが,従来の研究はそのことに言及するにとどまっているものが中心である.また,市制・町村制に至るまでに登場した地方債制度の諸構想に触れている研究も存在するが,紹介にとどまっており,それらの特徴や,実際に創設された地方債制度に与えた影響といった点については明らかにされていない.一方,それらの構想について一次史料を用いて明らかにしている歴史学者の研究が存在するが,実際に創設された地方債制度との関係についての視点が十分ではない.そこで本稿では,制度創設以前に登場した地方債制度の諸構想を検討することで,それらが実際に創設された制度にどのような影響を与えたのか,そして,創設された制度はそれらの構想と比較してどのような特徴を有しているのかについて明らかにすることを試みた.当初は地方制度一般に先んじて,それとは独立した地方債制度を定めようという構想が中心であったが,政府がそのような制度に否定的であったため,地方制度の内部で地方債制度を創設する方向で構想されることとなった.内容的に様々な特徴を有する構想が登場したが,実際に創設された地方債制度はプロイセンの制度の影響を強く受け,起債目的を具体的に明示せず,そのことによって監督官庁の起債許可が必要な範囲を広くすること等を主な特徴とするものであった.

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