沙漠研究
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小特集:乾燥地研究の動向と展望
気候変動に対応した作物育種
奥野 員敏
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2016 年 26 巻 1 号 p. 27-34

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抄録

21世紀末には地球の平均気温は0.3-4.8℃の範囲で上昇すると予測されている.とりわけ,人間活動がこのまま継続され,温室効果ガスの排出削減対策が講じられない場合,21世紀末には地球の平均気温は2.6-4.8℃(平均3.7℃)上昇すると予測され,地球規模での温暖化は一層深刻化すると警告されている.温暖化は乾燥地の砂漠化を進行させ,農業生産に対して大きな影響を及ぼすことが懸念されている.また,国連による人口推移予測によると,現在70億の世界人口が2050年には96億人に達する.爆発的な人口増加を支えるためには,気候変動に適応可能な作物品種の開発が喫緊の課題である.本稿では,このような地球規模での気候変動に対応した作物育種分野における取組みの現状と将来展開について述べる.とくに,水稲の登熟期高温耐性育種と耐冷性育種,トウモロコシの湛水耐性育種,果樹育種,国際研究機関との連携による乾燥耐性分子育種および乾燥耐性ゲノム育種における最近の研究成果とともに,筆者らが取り組んだ関連研究の成果について紹介する.

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© 2016 日本沙漠学会
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