日本沙漠学会における乾燥地研究の動向について考察した.学会誌「沙漠研究」に掲載された論文のうち,近年展望論文の投稿数が著しく減少している.展望論文は,特定のテーマについて,新たな段階に研究をステップアップしていく上で重要な論文である.若手研究者の研究モチベーションを高揚させるためにも,このジャンルへの積極的な投稿が望まれる.とりわけ,本学会員の行う研究は直接・間接的に干ばつ対策,沙漠化対処につながるものであり,現場での適用のあり方を最終ゴールとして進めていく必要があることから,行政サイドや現地住民の理解を日頃より得ておくためにも,展望論文のかたちで整理しておくことは有意義である.また,国連の持続可能な開発目標(SDGs),沙漠化対処条約(CCD),アフリカ開発会議(TICAD)などの国際的流れを踏まえた行政サイドからの時宜に応じた投稿も期待される.
原著論文は発刊とともに掲載件数は増加したが,最近10年間は減少傾向にある.これは憂慮すべき問題であり,若手学会員の積極的な投稿が望まれる.原著論文として掲載された論文について9つの研究領域ごとにその動向を概観した.
日本沙漠学会は,文系・理系融合を基軸とする学際的な学会であり,この強みを活かした学際的研究活動を学会でまとまって進めることが大切である.
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