2021 年 31 巻 1 号 p. 15-27
本稿の目的は,アムド・チベット牧畜民2世帯について,1)夏期と冬期の食料摂取の季節変化を把握し、2)近年の社会環境の変化が牧畜民の食生活にどのような影響を与えているかを,参与型調査により事例研究することにある.アムド・チベット牧畜民2世帯の食料摂取は,近年の冷凍庫とセパレーターの普及,市場経済の浸透により,夏期に乳・乳製品への摂取量が低下し,冬期に肉・内臓の摂取量が抑えられることにより,アムド・チベット牧畜民の食料摂取が季節性を失ってきたことが示唆された.