人類史の中で,世界の気候植生地域には,その自然資源に適合した農法(農業様式)が発生,変化したが,農業の自然改変力が再生能力を上回る場合は,その地域特有の砂漠化を引き起こした.このような農法の変化と砂漠化の過程は,森林,疎林,草原・砂漠の3時系列に類型化され,中央ユーラシアでは草原・砂漠の時系列がみられる(篠田,2021).同地域では,数千年前から遊牧が行われ,深刻な砂漠化は発生しなかったが,ソ連時代の大規模な穀作やかんがい農業は同地域には適合しない農法であり,その結果として,風食や土壌塩類化といった同系列特有の砂漠化を引き起こした.現在,モンゴル国では市場経済の中で家畜数が急増し,草原の収容力をすでに超えているものと考えられるが,この状況が続くと,最終氷期以降形成されてきた草原生態系が砂漠化する可能性があり,早急な対応が必要である.