複数の遊牧民が同じ空間を利用する,モンゴルの草原の持続的利用を考えるためには,同じ地域を利用する可能性のある家畜の動きを同時かつ長期的に観測する必要がある.共有草原における複数遊牧民の利用実態を把握するために,馬乳酒の名産地であるモンゴル北部のボルガン県モゴド郡で遊牧を営む2軒の隣接遊牧民が所有する家畜ウマを対象に,GPS首輪を用いた1年以上の同時追跡を行い,行動圏と利用分布重複を解析した.家畜ウマは2頭とも1年目と2年目で利用分布の大部分が重なったが,同一月内における個体間の利用分布重複は比較的小さく,隣接する遊牧民間における放牧戦略の違いの存在も示唆された.遊牧の持続可能性を探る上で,GPSを用いた多個体同時追跡研究は有効だろう.