2026 年 36 巻 1 号 p. 13-19
本稿は,「熱」という視点から中東地域における食に着目する.具体的な事例としては,イランにおける食事・食べ物をめぐる「冷・熱」の分類と,その実践を通じた伝統的な身体の自己調整について取り上げる.
本稿の構成は以下の通りである.まず初めに中東地域における食に着目した先行研究の整理を行い,本稿の着眼点である「熱」が,食という営みのなかでどのように扱われているか,どのように研究がなされてきたかについて整理を行う.その上で,本稿ではイランにおけるフィールドワークにより収集した事例に根ざす「熱(あるいは冷)」の概念を取り上げる.3において詳述するが,この「冷・熱」の概念は,人々の食事を通じた身体の自己調整としてあらわれる,伝統医療に根ざした実践であるとされる.この実践に焦点を当て,フィールドワークを通じて収集した事例を,文献資料と照らし合わせることで,イランの人々の日常実践に立ち現れる身体と環境の関係性をめぐる人びとの理解のありかたを考察する.