2020 年 10 巻 1 号 p. 31-45
メディアリテラシー教育における発言の試みとして、筆者の大学4年生ゼミはTOEICのスコアアップ方法をまとめた電子書籍を出版した。学生自身が戦略的に企画し、読者対象を絞り込み、東京からの情報ではなく、「地方」発信であるという特徴をタイトルに掲げるなど、他の商品と差別化を意図した。本稿は、メディアリテラシーの観点で実践内容7段階を提示し、電子書籍出版プロジェクトが自己客観視を重視した上で、広く社会とのコミュニケーションを学ぶプロセスであったことを次の点から総括した。第一に、プロジェクト7段階の全てにおいて、常に他者とのコミュニケーションを実践した。第二に、コミュニケーションの範囲を学生間の限定的なコミュニティからはじめ、就活を経て、新聞掲載など広報へ徐々に拡大し、社会とのコミュニケーションを学んだ。第三に、学習者コミュニティの維持にSlackとTrelloは有益で、共同作業が円滑化した。以上を整理すると、学習者の情報発信はICT環境でより可能になり、教室のような閉鎖的な環境では達成しにくい社会とのコミュニケーションを学ぶ教育効果を引き出すことが可能だと言えるであろう。