2012 年 2 巻 1 号 p. 127-146
本稿では、コミュニカティブな授業を実践しながら文法指導も効果的に行えるディクトグロスという学習活動に注目し、それを学習者のレベルに合わせて活用できるようにした実践例を紹介する。ディクトグロスとは、学習者にまとまった短い文章を読み聞かせ、学習者がメモを取り、そのメモをもとにグループで元の文章を復元していく活動である。学習者のレベルに合わせて教材や手順を修正していくことにより、より効果的に4技能を統合的に学習させることができる。学習者のレベルによって、ディクトグロスから得られる「気づき」の種類も変わってくることが、5 つのレベルの違ったクラスでの実践によって明らかにされた。レベルの低い学習者でも使用教材の工夫により、文法項目への「気づき」が多く見られ、自己をモニターするというディクトグロスの目的も達せられることが明らかになった。また、上級者レベルでは、メモ取りなどのストラテジー的な面での「気づき」が顕著となり、ディクトグロスを継続して行うことによって、学習者のメタ認知能力の育成にも期待ができることが示唆された。