メディア・英語・コミュニケーション
Online ISSN : 2436-8016
Print ISSN : 2186-1420
研究論文
インドの公用語問題にみる言語イデオロギー
英語をめぐる北部と南部の対立に着目して
久保田 絢
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2012 年 2 巻 1 号 p. 33-50

詳細
抄録

本研究は独立前後のインドにおける公用語問題、特に英語を公用語にするかどうかをめぐる南北間の論争に着目し、両者が構築した「言語イデオロギー」の論理構造を明らかにすることを目的とした。北部は英語を公的地位から排除することで精神の脱植民地化と大衆との融合を図り、独立国インドのアイデンティティを構築しようとした。一方、南部は英語を公用語として残すことで、北部と対等な立場を維持し、南部独自のアイデンティティを守ろうとした。本研究は、特定の言語を選択し、それを正当化する論理が共同体構想の一部であり、言語の選択はその価値だけではなく、それを話す人びとやその社会の価値づけをも同時に行う。言語イデオロギーの構築は、集団的アイデンティティの構築の一環なのであり、特にインド独立期において、それが集団的(政治的)アイデンティティの性質を決定したといえるほどの重要性をもっていたと言えるであろう。

著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本メディア英語学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top