メディア・英語・コミュニケーション
Online ISSN : 2436-8016
Print ISSN : 2186-1420
研究論文
映画「スラムドッグ$ミリオネア」をめぐる文化変容のダイナミズム
久保田 絢
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 3 巻 1 号 p. 47-64

詳細
抄録

本研究ではイギリス人のダニー・ボイル監督によるインドのスラム出⾝の少年を主人公にした 映画「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)を取り上げ、この映画をめぐる⽂化変容のダイナミズムを究明した。そのイギリスとインドのハイブリッドという性質ゆえに、この映画は⽂化変容のダイナミズムの起点となり、さらなる流動化をもたらした。インドにおけるこの映画に対する評価が批判から賞賛へと移っていったことは、グローバルな⼒とローカルな⼒のせめぎ合いを端的に表している。当初インドにおいては、⻄洋人による差別的なインドの表象であるとしてこの映画に対する批判が相次いだ。しかし、時間と空間が「圧縮」されたグローバル社会においては、グローバルな声がより大きなものとして現れる。オスカー受賞という高い国際的権威を帯びることで、インド国内ではこの映画が「我々」のものであるとの認識に転換していく。この認識の転換にグローバル社会におけるインドの人としてのアイデンティティの模索が表れている。

著者関連情報
© 2013 一般社団法人 日本メディア英語学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top