2014 年 4 巻 1 号 p. 79-96
本研究は毎日新聞の英語版The Mainichi に掲載されている英⽂記事とその原⽂とされる日本語署名記事を対象とし、翻訳の過程で起こる「変換」を観察および描写することを目的としている。分析対象データは、2012 年12 月から2013 年1 月にかけて収集し、日本語原⽂記事とそれに対応する英語翻訳記事について、⾔語別に小規模コーパスを構築した。分析の単位は分析⽅法によって、単語、統語構造、コンテクストの3 レベルとした。分析の手順として、コンコーダンスソフトウェアを用いて構築したパラレルコーパスを⾔語別に分析し、使用語彙に関する基本的な情報を得た。続いてそこから得られた知⾒に基づいて、統語構造とコンテクストから⾒た質的な内容分析を⾏った。分析に際し、通訳翻訳研究で用いられている諸理論の中から、翻訳の普遍的特性の概念の中の明示化(explicitation)、異⽂化要素の翻訳⽅略、ニュース翻訳の特徴とされるTransediting を取り上げ、説明を試みた。