2014 年 4 巻 1 号 p. 97-114
これまで「翻訳 (translation proper)」は言語教育のカリキュラムではほとんど取りあ げられてこなかった。だが21 世紀をむかえた今、ヨーロッパ諸国を中心に言語教育における翻訳に関心が高まりつつある。その理由の1 つとして、複⽂化・複言語主義の時代を迎えて言語観および言語教育のニーズが変化し、異⽂化・異言語間の「仲介能⼒ (mediation competence)」の養成という点に注目が集まっていることがあげられる。Gutt(1998)は関連性理論が翻訳研究に応用できると主張し、翻訳とは言語の解釈的用法であり、2 つの異なる言語の間に解釈的類似性を⾒出すことだとしている。本発表では、その枠組みを利用し、筆者がかかわった授業で学生が作成した字幕翻訳を分析し、字幕翻訳がまさに仲介⾏為であることを論ずる。その上で、字幕翻訳をどう言語教育に取り入れるのか、またそれによってどのような教育的貢献が期待できるのかについて議論する。