メディア・英語・コミュニケーション
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4 巻, 1 号
メディア・英語・コミュニケーション
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
目次
大会基調講演
研究論文
  • 石原 知英
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、英語教育におけるメディア意識という概念のあり⽅やその測定・評価の⽅法を検討することを主眼とし、(1) 時事系の⻑⽂読解における読みの態度の類型化と、(2) 読みの態度の違いが作⽂課題に与える影響、の2 点について検討した。具体的には、103 名の大学⽣による、読みの態度を問う質問紙と6 つの作⽂課題を分析の対象とした。因⼦分析およびクラスタ分析の結果、学⽣の読みの態度は、批判的な読みと字義的な読みの志向性によって大きく3 つに類型化されることが明らかとなった。また、分散分析の結果、読みのタイプによって作⽂課題の平均評定が異なることが⽰唆された。最後に、今後の展望と⼀般化に向けた課題について指摘し、メディア意識研究の英語教育への応⽤についての⽰唆をまとめた。

  • その情意的イメージと社会への影響
    柴田 亜矢子
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 23-42
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論⽂は、⽇本社会において英語がブランド化した現象を、クリティカル・ディスコース・アナリシス(CDA)を応⽤することで考察する。CDA は、言語理論を⽤いて社会現象や問題を明らかにする研究アプローチであり、表層的な言語分析を超えた学際的な研究が可能となる。はじめに、ブランド理論を適⽤し、英語がブランド化した現象を分析する。⽇本には多様な英語観が存在するが、その1 つは「商品としての英語」である。本論⽂では、商品を超えた上位概念として英語が「ブランド」になった現象を明らかにする。次に、この英語観が実際にどのように機能しているかを言語景観論的視点から分析する。本研究のデータは、商業施設のロゴと看板、地図などで使⽤されている⽂字である。施設を表象するロゴやシンボルマークがどのような⽂字か、看板や案内図などはどのように表記されているかを分析することで、ことばとイメージ作りとの関係、またブランドとしての英語との関係を考察する。最後に、ブランドとしての英語が内包しうるイデオロギーが、⽇本社会と⽇本⼈英語学習者に及ぼしうる影響についても論じる。

  • 井上 彩
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 43-55
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    一般的にクレオール⾔語を話すことは学校教育では学生の学修に有害であると考えられることが多い。ハワイ・クレオールの状況もその例外ではない。主に⾔語⼲渉への懸念を理由としてクレオール⾔語や口語、また非標準的方⾔は教育の外部におかれてきた。しかし近年「⾔語意識(Language awareness)」はクレオール⾔語の話されている環境で⾔語教育、英語教育において有用で⾰新的な概念であると議論されるようになってきた。本研究ではハワイ・クレオールに関する⾔語態度や⾔語的イデオロギーに⾔語意識がいかなる役割を果たしているかという問題について考察する。

  • 2014 年 4 巻 1 号 p. 57-78
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 翻訳シフトとストラテジーに関す関する事例研究
    吉田 国子
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 79-96
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は毎日新聞の英語版The Mainichi に掲載されている英⽂記事とその原⽂とされる日本語署名記事を対象とし、翻訳の過程で起こる「変換」を観察および描写することを目的としている。分析対象データは、2012 年12 月から2013 年1 月にかけて収集し、日本語原⽂記事とそれに対応する英語翻訳記事について、⾔語別に小規模コーパスを構築した。分析の単位は分析⽅法によって、単語、統語構造、コンテクストの3 レベルとした。分析の手順として、コンコーダンスソフトウェアを用いて構築したパラレルコーパスを⾔語別に分析し、使用語彙に関する基本的な情報を得た。続いてそこから得られた知⾒に基づいて、統語構造とコンテクストから⾒た質的な内容分析を⾏った。分析に際し、通訳翻訳研究で用いられている諸理論の中から、翻訳の普遍的特性の概念の中の明示化(explicitation)、異⽂化要素の翻訳⽅略、ニュース翻訳の特徴とされるTransediting を取り上げ、説明を試みた。

  • 豊倉 省子
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 97-114
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    これまで「翻訳 (translation proper)」は言語教育のカリキュラムではほとんど取りあ げられてこなかった。だが21 世紀をむかえた今、ヨーロッパ諸国を中心に言語教育における翻訳に関心が高まりつつある。その理由の1 つとして、複⽂化・複言語主義の時代を迎えて言語観および言語教育のニーズが変化し、異⽂化・異言語間の「仲介能⼒ (mediation competence)」の養成という点に注目が集まっていることがあげられる。Gutt(1998)は関連性理論が翻訳研究に応用できると主張し、翻訳とは言語の解釈的用法であり、2 つの異なる言語の間に解釈的類似性を⾒出すことだとしている。本発表では、その枠組みを利用し、筆者がかかわった授業で学生が作成した字幕翻訳を分析し、字幕翻訳がまさに仲介⾏為であることを論ずる。その上で、字幕翻訳をどう言語教育に取り入れるのか、またそれによってどのような教育的貢献が期待できるのかについて議論する。

  • 南津 佳広
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 115-128
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、逐次通訳におけるノートテーキングを手掛かりに、人間はなぜ通訳を介して異⽂化間のコミュニケーションをはかることができるのかを、トマセロの協⼒モデルの枠組みを参照に考察し、ノートテーキング付きの逐次通訳は何に動機づけられて成⽴するのかに迫る。これまで通訳者個人の直感と実務経験から得られた略字や記号を用いると述べられてきたノートテーキングの表記内容・表記⽅法は、通訳者が聴取した原発言の一般的な概念表⽰に動機づけられた意味論レベルの処理段階であり、その表記内容は最小命題の主要素を構成する概念表⽰の断片を構造化して表記していることがわかった。また、訳出局面では、ノートテーキングの表記をもとに通訳者が語用論操作を⾏って訳出していることが分かった。この語用論的操作を可能にさせるのは、協⼒モデルでいうコミュニケーション参与者間の共有志向性が⼤きな役割を果たしていることを主張した。

  • Sakae Onoda
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 129-139
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    この論文は、メタ認知的な自己調整学習に対する意識づけの指導 (Vandergrift, 2004) が、日本の大学生の英語リスニング力向上にもたらす効果について検証した研究結果の報告である。教育心理学の研究では、メタ認知的な自己調整学習は学習の成功をもたらす重要な要因であること (Pintrich, 2004) が明らかになっている。また第二言語習得研究でもメタ認知的な自己調整学習が英語力向上に効果がある(Goh, 2000)としているが、EFL の環境でリスニング力向上の効果について検証した研究は限られている。この研究では、Global Studies を専攻する大学生を対象に、2013 年の 4 月から 2014 年の 1 月までの期間にメタ認知的な自己調整学習に対する意識づけの指導を受けた学生が、そのような指導を受けなかった学生と比較して、リスニング力向上にどのような違いがあったかに関して TOEFL を用いて検証を行った。得られたデータを統計的に処理した後、さらに面接によるデータを用いて解釈を行った。その結果、英語リスニング向上の点で、メタ認知的な自己調整学習に対する意識づけの指導は効果があることが明らかになった。

  • 自由記述からみた小学⽣の意識
    山本 淳子
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 141-160
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    小学校の英語活動において、⽂字指導の実践を⾏った。国際交流、映画、劇を通して四技能を指導し、実践後に自由記述アンケートで児童の反応を探った。⽂字指導について全体の7 割の児童が肯定的な考えを持っていた。学んだ英語を思い出させるというアウトプットチェックを⾏い、偏差値で上位、中位、下位の3 つのグループに分けたが、3つのグループとも「読み書きすることでより英語を覚えられる」と考える児童が多く、成績との関連はないことがわかった。肯定意⾒を述べた児童に、そう考える理由をたずね、テキストマイニングソフトで分析したところ「書くことが覚えることにつながる」「書いたほうが記憶に残る」といった回答が目⽴った。活動についての感想では、「楽しかった」が最も多く(8 割以上の児童が回答)、次に映画を用いた活動と、グループごとに英語劇を発表する活動が続いた。この自由記述においては、読み書きに関するキーワードは少なかったが、⽂字学習を取り入れた英語活動は好意的に受け止められたと結論付けた。

  • 大学生初級英語学習者を対象として
    篠塚 勝正, 水澤 祐美子, 柴田 節枝
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 4 巻 1 号 p. 161-179
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、⾳読を中心とした訓練が、英語⼒向上に奏功するかどうかを調査したものである。大学のプレイスメント・テストで初級レベルと判断された約170名の大学1、2 年生を対象とし、実験群(グループ1)と統制群(グループ2)に分け、3 ヶ月間の⾳読を中心とした訓練を⾏った。後期では実験群と統制群を入れ替えた(グループ1を統制群、グループ2を実験群とした)。⾳読を中心とした訓練には、1)⾳読訓練、2)スラッシュ・リーディング、3)クローズ・テスト、4)⾳読筆写、が含まれる。その結果、訓練後には前期・後期ともに、実験群においてTOEIC Bridge®のスコアが有意に上昇した。この研究結果に対する考察及び、今後の課題にも⾔及した。

実践報告
  • 河原 清志, 岡部 菜穂子, 阿部 千穂子
    原稿種別: 実践報告
    2014 年 4 巻 1 号 p. 181-205
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿は「メディア意識論」を基盤にして組み⽴てた “Media English”という⼤学の学部で の授業実践報告である。授業概要やシラバスを紹介するとともに、受講⽣2 名の研究発表の成果を掲載する。1 つめは「マイノリティ報道の比較分析」と題し、セクシュアルマイノリティの権利に関する各国の報道の比較をもとに、現代において必要とされるメディアリテラシーについて議論するものである。多様性の尊重が叫ばれる現代、マイノリティの権利に関する報道をする際は、特に賛否両論を尊重していくことが求められる。そこで、各国メディアにおけるマイノリティの扱いに着目し、その問題点を探ったうえで、私たち読者がこのような報道をどのように受け止めていくべきか議論する。もう1つは「科学ニュースについての報道比較」と題し、2013 年1 月以降、「なんだかよくわからないけれども、中国から飛んできた、PM2.5 と呼ばれる非常に危険な物質」のように恐怖や不安を煽られる形で受容を余儀なくされるに至った「PM2.5 問題」を題材に、日本や中国、その他の国の報道を比較して、目に⾒えにくい対象を扱う科学的なニュースを、どのように捉えるべきかを提案する。 メディア英語を対象にした研究の成果を教育分野に応用することは、マルチ・グローバル・デジタルなどといった多様な形容詞と結びつきうる「メディア」の重要性に鑑みると、喫緊の課題であると⾔える。それは単に、情報を媒介するメディアである英語という⾔語の構造を理解したり、マスメディアが発信するニュースの英⽂の表層的な意味や内容を理解したり、あるいは時事英語の語彙数をより多く習得したりすることの促進に留まるものではない。これは、近時提唱されている「メディア意識」の向上を図るという、もっと⼤きな課題に取り組むことを意味している。

  • 2014 年 4 巻 1 号 p. 207-221
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • Web スキル習得とプロジェクトベースプレゼンテーション授業を通して
    杉橋 朝子
    原稿種別: 実践報告
    2014 年 4 巻 1 号 p. 221-241
    発行日: 2014/08/30
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論⽂は、「ウェブスキルを習得しながらのプロジェクトベース英語プレゼンテーションクラス」履修後の学⽣アンケート結果からICT 使用の英語授業デザインについて考察したものである。履修学⽣は英語習熟度が中上級の男⼥⼤学1 年⽣38 人で、授業はコンピュータ教室を使用、プレゼンテーションを録画・録音したポートフォリオ作成が目的であった。トピックは別に開講されている英語ライティングクラスで学⽣が個々に選んだ社会的な問題を扱い、ポートフォリオには参考とした英語の読み物や、自分の⼩論⽂、関連するYouTube ビデオなども掲載するプロジェクトである。英語でコンピュータとウェブスキルを学ぶ授業は画期的と思われたが、学⽣からの反応は他の英語スキル授業に対する満⾜度とほぼ同程度かやや下回っていた。また、指導したウェブ上のツールに学⽣の継続使用が余りないものがあり、教員側の意図と学⽣側の反応も違いが⾒られた。ウェブスキルを兼ね備えたEFL 教員が少ないことや、学⽣と指導者、学⽣同⼠のコミュニケーション不⾜も解決が必要と思われた。ICT 使用でも授業デザインはEFL と学⽣を中⼼にすることが、より良い学びにつながることが考察された。

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