2003 年 23 巻 1 号 p. 23-31
超高齢化社会の到来,少子化,疾病構造の変化,医療経済の逼迫などわが国における医療環境は抜本的な構造改革を迫られている.その改革の一環として,2003年4月より,特定機能病院へ包括評価導入が決定した.これらの大きな変革への対応には,全病院的な体制を整えるとともに,ITの活用が不可欠である.
今回,包括評価導入への対応として,病院情報システムのサブシステムとして診療情報サマリ登録システムを開発し,退院時サマリに相当する様式1に関するデータを主治医がオンラインで登録できるようにした.一方,98年より取り組んできた病院経営支援や診療支援を目的とする病院データウェアハウス(Data Warehouse: DWH)について,DPC (Diagnosis Procedure Combination)の決定など迅速な意志決定に有効な機能強化を行った.DPCを医療マネジメントツールとして有効活用できれば,医療サービス提供者,支払者,政府,国民など医療保障システム関係者の情報共有のための「共通のスケール」となり,医療システムの効率化,医療の質の向上が期待できる.
本院では,DPC導入をpositiveにとらえ,「いかに質の高い医療や看護を,いかに低いコストで提供できるか」という「品質管理」「コスト管理」のツールとして利用できるよう,DPCごとの患者別原価計算システムを開発した.本報告では,DPCごとの医療材料費,給与費などの変動経費を用いた原価計算と,DPCごとの看護量の実態を明らかにし,今後の病院経営や患者管理に有効であることを評価した.