医療情報学
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研究速報
臨床で使用されている看護行為名称の分析
水流 聡子石垣 恭子宇都 由美子高見 美樹
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2003 年 23 巻 1 号 p. 65-76

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抄録

 本研究の目的は,病院の電子カルテに必要な看護行為名称に関して,次の3点を明らかにすることである.

 ① 看護行為名称の収集と分析を通して,看護行為が有している構造を明らかにする

 ② それらの構造に関する情報をもとに,看護行為そのものの複雑性を明らかにする

 ③ その上で,看護行為マスタに準備する看護行為名称の条件を特定する

 病院情報システムを導入している10病院と在宅看護領域から,看護師が実施する行為名称7,503件をMEDIS-DCが収集した (2002年7月).このうち,看護の裁量が大きい看護行為3,776件を選択し,分析を行った.行為名称1件毎に,「本質的な看護行為部分」と,「実施時の条件部分」を分離し,全体の再構成作業を実施した結果,23分類 (看護の目的別分類),総計153行為に収束した.実施時の条件部分は,「人・時間・物・場所・注意事項」に分類された.人と時間には,153行為すべてに適用可能な「条件の基本セット項目」が存在した.これに対し,当該行為のみに適用される「特殊項目」が存在した.153の行為を母数としたときに,特殊項目が適用される割合は,人条件 22%,時間条件 24%,物条件 32%,場所条件 23%,注意事項(1) 条件 9%,注意事項(2) 条件 12%であった.「23分類」と「条件因子の有無」とをクロス集計した結果,リハビリテーション・清潔・排泄・苦痛の軽減・精神心理的ケアは,条件因子を有する行為が多く,複雑度の高いケアであることが示唆された.また 153行為について,「人・時間・物・場所・注意事項」の条件因子の視点からクラスター分析した結果,看護の目的を意味する23分類の枠組みがくずされることが理解できた.23に分類された 153行為の複雑度の性質が異なること,複雑度の視点から新たな分類が作成可能であること,が示唆された.以上のことから,看護行為は,看護の目的を意味する分類である第1階層・第2階層・第3階層と,複雑度等を表現する第4階層,そして実施時条件,によって構成されると考えられた.

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© 2003 一般社団法人 日本医療情報学会
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