2003 年 23 巻 3 号 p. 193-198
医療統計手法研究会では,医学・医療分野での統計処理方法を研究してきた.実際の臨床データ,動物実験データなどの統計解析を行っていると,従来から知られた統計手法では処理しきれない問題に直面することがある.これらの問題を統計理論から解明し,そのデータの特質にあった解析手法を新たに開発することが本研究会の活動目的である.活動目的の2つめは,実データを用いた統計解析の実践である.自分の専門分野に特化した研究を行う医学研究者たちは,統計解析や統計解析ソフトウエアの利用方法に熟知していないことがある.そこで,本研究会のメンバーが,適切な解析方法でデータ解析を行いより信頼性の高い解析結果を研究者に提供するのである.さらに,活動目的の3つめは,医療統計学の啓発活動である.日本の医学教育では,医療統計学を体系的に習得する機会がほとんどない.一方,研究の現場では,かなりの比率で統計処理が必要となる.医療統計学を学習する場を提供し正しい知識と技術を習得してもらうことは日本の医学研究にとって必要であると考える.
このような活動目的の下で,研究会のメンバーがそれぞれの立場で研究を進めてきた.研究の性質上,研究会を開催する機会は少なかったが,各人が研究業績を残している.本稿では,研究会のメンバーがメンバー同士の意見交換などから作成した論文や報告をもとに,いくつかの新しい解析手法の紹介と医療統計解析のコンサルテーションの実績,さらには,教育啓発活動について解説する.