2005 年 25 巻 4 号 p. 231-238
管楽器奏者に口唇外傷予防を目的としたミュージックスプリントを装着すると,音色も変化することが知られており,我々の臨床でもしばしば経験しているが,音色変化を定量的に解析,評価した研究は少ない.そこで,プロのトランペット奏者の協力を得て,スプリント装着時と非装着時の音色を,音響解析による物理的比較,自然音の一対比較法による聴覚比較,そしてデジタルフィルタリング法を用いた合成音比較の3方法で比較した.
物理的比較では,long-tone録音後に高速フーリエ変換を行い,スプリント装着時に高周波倍音成分の音圧が高くなっていることが示せた.聴覚比較では,音楽経験にかかわらずスプリント装着時の音をより好む被検者が多いことを明らかにできた.そして,低周波数部分を共通にし倍音成分のみを入れ替えた合成波形比較では,基音に対して13次から20次の倍音が,音色の好みに影響を与えていることを示せた.