医療情報学
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研究速報
ゲフィチニブ副作用記録からみた電子カルテ導入の効果とその分析
高田 雅弘小原 延章永田 啓原口 亮難波 経豊中沢 一雄
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2006 年 26 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

 京都医療センターに導入された電子カルテの評価を,カルテ記録における情報共有に与えた影響という新しい視点から試みた.評価の指標として肺癌治療薬ゲフィチニブの副作用に関する記録を用いた.この副作用は社会的な問題にもなり,関連する記録は安全性の面から情報共有の必要性が高い重要な情報である.ゲフィチニブを投与した入院患者18名の経過記録内容を調査し,電子カルテ導入前と導入後3カ月ごとの副作用に関する記録件数と入力時刻を比較した.副作用に関する1日平均記録件数は電子カルテ導入直前の0.25件から,導入後1年には0.97件に増加した.実施記録などを含めた全記録の1日平均記録件数は電子カルテ導入直後に0.50件から4.66件に増加したが,入力を日勤時間内に行った割合は減少した.電子カルテ導入は入力負荷を増加させるものの,入院患者に対する副作用記録件数を増加させ,医薬品適正使用の観点からは医療の安全性向上に有効と考えられる.

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© 2006 一般社団法人 日本医療情報学会
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