医療情報学
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技術ノート
病院の財務分析システムの知識表現方法と推論方式の検討
岡田 佐知子長瀬 啓介伊藤 朱子竹村 匡正黒田 知宏吉原 博幸
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キーワード: 財務分析, 推論, 知識表現
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2007 年 27 巻 2 号 p. 199-203

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抄録
 [背景] 財務分析は企業の財務内容を分析する手法であり,競合他社の実力を検討するなどの外部分析手法として活用されるが,自社の経営状態をチェックする内部分析手法としても活用される.非営利組織である病院においても,近年は経営の効率化が求められるようになり,内部分析手法として財務分析が必要とされている.しかし,人手による財務分析にはコストと時間がかかり,分析者により評価が分散する可能性がある.システムで財務分析を実現することにより,コストダウン,時間短縮と評価の一貫性の確立が実現できると期待される.
 [目的] 本研究は,病院の財務分析システムの要件,知識表現方法と推論方式を検討することを目的とする.
 [方法] 病院の財務分析に必要な要件は以下のように細分化されると考えられる:1)指標の定義,2)指標値の算出,3)指標値の評価,4)問題点の抽出.これらを実現するためのシステムの構築方法としては,比較的知識体系が明確という財務分析の特性と,定型的なフォーマットでまとめて入手しやすいという財務データの特性より,ルールベースと前向き推論を用いることが適切と考えられる.プロトタイプを構築し,病院経営コンサルタントによる評価実験を行った結果,評価項目「総合的に見て財務状態の分析ができている」に対し5名中2名が「少し同意」と回答した.
 [結論] 病院の財務諸表から経営状態を把握し問題点を摘出するシステムを構築するための要件と方法論を検討した.評価実験の結果,財務分析には非財務情報を用いた分析,ユーザの理解度を深めるための仕組みも必要であると示唆された.
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© 2007 一般社団法人 日本医療情報学会
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