医療情報学
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27 巻, 2 号
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総説
  • 松田 晋哉
    2007 年 27 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     医療の目的は質の高い医療サービスを国民に提供することである.したがって,医療についての種々の議論の前提として,医療の質を評価するための情報が必要となる.ただし,医療について絶対的な評価は困難であることから,相対的な評価がその中心となる.相対的な評価をするためには共通のベースが必要であり,それがDPCである.DPCという標準的な単位を用いることで施設間の比較が可能になったことが,DPC導入の最も重要なポイントであり,これが病院におけるマネジメントの改革につながるのである.キーワードは情報の標準化と透明化,そして説明責任である.すなわち,医療サービスの質の可視化がDPCの目的なのである.
  • 松村 泰志, 近藤 克幸, 庄野 秀明, 白石 公徳, 鈴木 誠一, 田中 豊
    2007 年 27 巻 2 号 p. 157-167
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     手術に関するシステムは,導入に苦慮するシステムの一つである.本稿では,大阪大学,秋田大学,佐賀大学,九州大学,東海大学のそれぞれの大学病院における手術に関するシステムの現状をまとめ,課題を提示する.手術申し込み,麻酔の依頼,手術予定作成,実施内容登録を扱う手術システム,モニタから生体情報を収集し,麻酔と使用薬剤を記録する生体情報管理システム,手術材料を準備し使用したものを記録する物流管理システムがある.更に,輸血の依頼と記録,病理オーダ,放射線検査オーダおよび画像照会,手術レポート作成のためのシステムが要求される.手術で使用した物品の入力,この情報を物品管理,医事請求に利用する方法,生体情報管理システムに入力された使用薬剤や麻酔情報の電子カルテシステム,医事会計システムへのインターフェイスに課題がある.システム導入を成功させるためには,十分な業務分析を行うことが必要であり,費用対効果を考慮し,効果的な導入計画が重要である.
解説
  • 花田 英輔, 工藤 孝人, 加納 隆
    2007 年 27 巻 2 号 p. 169-177
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     先端医療を担う大規模病院はIT化が進んだこともあり,電源なしでは検査も手術もできないといってよい.しかし医療機関における電源の用途は多岐に亘り,要求事項も用途別に異なる.求められる容量や安定性,停電時のバックアップや使用状況監視の必要性などを考えた場合,用途別に分けて供給する必要があると考える.特に,医療機関がIT化時代を迎えた今,医療機器用電源とコンピュータ用の電源は完全に分離すべきであり,ユーザに対する教育も重要である.在宅医療における電源環境整備も望まれる.ここでは医療機関における電源の用途別分類とそれぞれに必要とされる要求事項,使用上の注意点,非常電源について解説する.
研究速報
  • 藤井 歩美, 松村 泰志, 中島 和江, 吉本 幸子, 峯野 隆広, 西山 謙, 赤木 剛, 武田 裕
    2007 年 27 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     目的:医療スタッフのみで約2,000人を擁する本院では,職員が一丸となって病院の掲げる目標を達成するために,病院経営戦略を行動に移すツールの一つであるBalanced Score Card(以下BSC)を用いた各部門別マネジメント支援システムを,病院情報システムイントラネット上で開発し,その評価を行った.
     方法:医事システム,経営管理システム,部門システム等から重要業績評価指標(Key Performance Indicator,以下KPI)を抽出し,BSCの5つの視点,すなわち「財務の視点」「内部プロセスの視点」「患者の視点」「職員の視点」「成長の視点」に分類し,病院全体と部門ごとに統一的に表示するシステムを開発した.表示にあたっては,所属部署の特徴や病院全体での位置づけが分かるように時系列データのグラフを中心とし,全国平均や病院全体平均をベンチマークとして具体的数値を挙げ,改善目標が一目で分かるよう「見える化」に特に配慮した.
     本システムの評価のため,2006年8月(リリース直後)とその6カ月後に医療従事者・事務職を対象にアンケート調査を実施するとともにシステムへのアクセス数の推移を観察した.
     結果および考察:初回調査では,マネジメント手法に必要なキーワードの認知度,本システムと従来の紙媒体等による管理データ配布との差異などについて職種別に興味深い結果を得た.第2回目調査ではPDCAツールとしての有用性,有効性,効率性などを調査したが,アクセス数の増加と比例して,本システムが医療現場でも活用されているものと推定することができた.
  • 中村 義智, 西澤 崇子, 尾上 宇子, 隈 夏樹, 廣川 満良
    2007 年 27 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     2005年2月,当院は紙カルテから電子カルテへと移行した.電子カルテへの移行に伴い,電子カルテから電子化された紙カルテの内容を参照できるよう取り組みを行った.紙カルテはスキャナを用いて電子化し,カルテ画像サーバへ格納するという手法を取った.電子カルテ移行の3年前よりスキャン作業を開始し,移行までに約3万册のカルテを電子化した.電子化された紙カルテはWEBサーバによって配信され,患者IDを含んだURLでリンクされることによって,電子カルテ端末上で参照することが可能となった.そのため紙カルテに記載された古いデータを知りたいときでも紙カルテを搬送する必要はなくなった.現在はアクティブの紙カルテ約5万册について電子化が完了し,保管されているすべての紙カルテ約20万册を電子化する作業を進めている.
  • 奥山 尚史, 西平 順
    2007 年 27 巻 2 号 p. 191-198
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     北海道情報大学では,通信教育部にてインターネットを活用した単位修得可能なeラーニングを実施し,学習意欲の維持や知識定着に一定の効果を上げている.また,通学部においてもeラーニングを開始し,多様化する学生のスキルやニーズ,ライフスタイルに対応した教育の実践が可能になった.本研究は,eラーニングを座学教育と連動・補完させることで,医療現場で即戦力と貢献できる診療情報管理士,医療情報技師の人材の育成を行う.教材は,PCや携帯電話,携帯オーディオから常時利用可能とし,適時メンタリングすることで利用の活性化をはかる.また,eラーニングシステム開発や教材制作に学生を参画させ,「インストラクショナルデザイン」のスキル向上も行う.座学授業を補完する一環として「用語ドリル」,「知識ゲーム」,「医療情報技師試験の実力診断」を実施する.個別対応可能なeラーニング教材をインターネットにて学内外へ公開し,「基礎学力の向上」,「学習意欲や満足度の向上」をコンセプトに質の高い医療情報人材を育てることが可能なシステムを構築する.
技術ノート
  • 岡田 佐知子, 長瀬 啓介, 伊藤 朱子, 竹村 匡正, 黒田 知宏, 吉原 博幸
    2007 年 27 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     [背景] 財務分析は企業の財務内容を分析する手法であり,競合他社の実力を検討するなどの外部分析手法として活用されるが,自社の経営状態をチェックする内部分析手法としても活用される.非営利組織である病院においても,近年は経営の効率化が求められるようになり,内部分析手法として財務分析が必要とされている.しかし,人手による財務分析にはコストと時間がかかり,分析者により評価が分散する可能性がある.システムで財務分析を実現することにより,コストダウン,時間短縮と評価の一貫性の確立が実現できると期待される.
     [目的] 本研究は,病院の財務分析システムの要件,知識表現方法と推論方式を検討することを目的とする.
     [方法] 病院の財務分析に必要な要件は以下のように細分化されると考えられる:1)指標の定義,2)指標値の算出,3)指標値の評価,4)問題点の抽出.これらを実現するためのシステムの構築方法としては,比較的知識体系が明確という財務分析の特性と,定型的なフォーマットでまとめて入手しやすいという財務データの特性より,ルールベースと前向き推論を用いることが適切と考えられる.プロトタイプを構築し,病院経営コンサルタントによる評価実験を行った結果,評価項目「総合的に見て財務状態の分析ができている」に対し5名中2名が「少し同意」と回答した.
     [結論] 病院の財務諸表から経営状態を把握し問題点を摘出するシステムを構築するための要件と方法論を検討した.評価実験の結果,財務分析には非財務情報を用いた分析,ユーザの理解度を深めるための仕組みも必要であると示唆された.
  • 藤川 潤, 塩田 浩子, 松月 みどり
    2007 年 27 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     医療安全のためには,職員によるインシデント・アクシデントの自発的な報告,報告に対する迅速な対応,事例の共有と分析が不可欠である.われわれは従来の紙ベースのインシデント報告システムをオンライン化するに際して,データベースとしての機能に加え,①職員の使い勝手のよい入力機能と検索機能・ウェブ上での事例共有機能,②リスクマネージャ等の医療安全活動を支援するための検索機能・「お気に入り」設定機能・メール自動通知機能・進捗管理・リアルタイム集計機能・データエクスポート機能(Microsoft Excel形式)が重要であると考えた.2006年5月よりインシデント報告システムの設計と実装を行い,着手後約3カ月で実稼働に至った.その結果,従来の紙ベースの報告書より情報量が大幅に増えたにもかかわらず,月1,000件前後の報告実績を維持し,報告への迅速な対応やデータの詳細な解析を可能とすることができた.本システムの事例共有機能とデータ後利用機能により,職員の意識づけと医療安全の改善が期待される.
  • 山本 景一, 松本 繁巳, 松葉 尚子, 多田 春江, 松山 晶子, 柳原 一広, 手良向 聡, 福島 雅典
    2007 年 27 巻 2 号 p. 211-218
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     京都大学医学部附属病院探索医療センター検証部では,京都大学で実施される臨床研究のデータマネジメント・統計解析・モニタリングに関する業務の支援を行っている.従来の臨床研究は,プロトコルごとに個別に紙で作成された症例報告書の記入を行い手作業により回収を行うため,原資料検証を含むデータ品質管理や症例報告書回収等の作業負荷が大きく,一般に高コストになる傾向がある.臨床研究のコスト削減と効率化のために,電子カルテデータの二次利用が期待されている.われわれは,京都大学医学部附属病院外来化学療法部とともに,日常診療からデータ収集・統計解析までの業務を一連の流れとして,電子カルテから必要な情報を集積し,疾患の予後・予後因子・治療成績・医療技術の安全性等を評価する臨床研究用データ収集システムを考案し,完成を目指している.本システムを複数施設に導入し,導入先施設からデータを収集することにより,がん領域における大規模な臨床医学研究用データベースとなり得る.本システムの開発により,臨床研究のコスト削減・効率化・品質向上が期待される.
  • 佐藤 謙一, 山本 英男
    2007 年 27 巻 2 号 p. 219-222
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     核医学検査において,がんの早期発見に関する検査として positron emission tomography(PET)検査が急速に普及してきている.当センターにおいても,2006 年 10 月に PET 装置と computed tomography(CT)装置が一体型となった positron emission tomography-computed tomography(PET-CT)装置を導入した,PET- CT から は CT,PET,CT と PET を融合した fusion の 3 種類の画像が発生するが,picture archiving and communication system(PACS)への電子保存で新しいモダリティとしての問題が発生している.そこで,PET- CT および PACS の digital imaging and communications in medicine(DICOM)modality worklist management(MWM)情報と PET-CT 画像のタグ情報より,問題の把握と運用方法について検討した.PET-CT から発生する各画像のタグ情報は,モダリティ分類が CT,PT,OT であった.PACS は 1 検査オーダ(Accession number)に 3 種類の画像が保存されることになり,画像転送方法によって PET-CT の画像は PACS でのモダリティ分類が異なる現象が発生した.この問題において PACS への検査終了時の画像転送方法を統一する運用方法で,モダリティ分類を PT にすることで問題を解決した.
  • 三島 裕彦
    2007 年 27 巻 2 号 p. 223-227
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     最近,処方せんの記載ミスに関する医療事故の報道が相次ぐ中,我々薬剤師は医療安全への対策と推進を図らなければならない.医師は薬を処方するとともに情報も処方し,薬剤師は薬を調剤するとともに情報も調剤する.薬物療法の発展と共に,医薬品の適正使用を順守するためには,処方オーダエントリシステムの処方作成支援システムの発展と患者の生命に重篤な影響を及ぼす危険性が高い薬剤に関わる薬剤師の処方鑑査による二重の安全対策が今後も必要である.処方オーダエントリシステムは処方作成に合理性をもたらしたが,処方オーダ用語は手書き時代の用語のままである.本研究は処方作成支援学習型システムに用いる処方用語データベースの開発の一環として,処方オーダエントリシステムならびに注射オーダエントリシステムで使用された処方オーダ用語データおよびフリー入力されたコメントデータとこれに関する処方の疑義照会内容に基づいて,処方オーダ用語の分析を行ったので報告する.
  • 菖蒲澤 幸子, 山内 一史
    2007 年 27 巻 2 号 p. 229-236
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/04/10
    ジャーナル フリー
     わが国の看護中間管理者に必要となる系統だった情報処理能力とその教育を検討するため,電子カルテ等コンピュータが導入されている施設の中間管理者およびスタッフナースを対象に質問紙調査を行った.情報処理能力を問う項目は,Staggers らの示した看護師の 4 つのレベル別のリストの中から,わが国の状況にも当てはまる 70 項目を用いた.背景要因としては,①卒業した看護基礎教育課程の種類,②業務以外のコンピュータの所有の有無,③コンピュータ使用上の助言者の有無,④コンピュータを得意と思っているか,⑤導入システムに慣れたかどうか,を調査した.5 病院 522 名の臨床看護師から回答を得,522 名を中間管理者 114 名,29 歳以下のスタッフナース 248 名,30 歳以上のスタッフナース 160 名の 3 つの群に分け,群間の有意差を検定した.その結果,コンピュータスキル 48 項目中 35 項目,情報の知識スキル 22 項目中 21 項目と多くの項目で中間管理者が有意に習得していた.中間管理者の習得していたコンピュータスキル 30 項目に関して背景要因との関連を見た結果,業務以外のコンピュータの所有,システムへの慣れが習得に有意に関連していた.コンピュータスキルに関しては,日常でのコンピュータの使用や,導入されたシステムをよく利用し慣れることによって身につく可能性が高く,情報の知識・スキルの項目より教育の必要性が相対的に低いことが示された.
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