抄録
近年,高齢化による疾病構造の変化,在院日数の短縮,介護保険の導入などにより在宅での看護 / 介護の必要性が増大している.しかし,在宅療養者やその家族の医療知識不足に加えて,知識を獲得するためのしくみは整備されていない.これらの問題を解決するために,今回個人・症状ごとに対処方法を提示するシステムの開発を行った.次のステップでは,データを定義するスキーマとして最新のWEB技術であるRDF(Resource Description Framework)を利用することを想定して,既存の看護学文献などから看護 / 介護知識をエレメント化して抽出し,それぞれのエレメントの関係を定義したデータベースを作成した.さらに,このデータベースからデータを再構築し,最適化された知識を提供することを目的にシステムの開発を行った.本研究で試作したシステムは症状から疾患を推定し,対処方法を抽出する基本的なデータ構造に加えて,治療中の疾患を関連付けることにより疾患や対処方法が個人・症状ごとに最適化されるように設計した.その上で発熱が起こる13疾患に限定し,症状から疾患を推定するためのデータベースと,症状と症状から推定された疾患に治療中の疾患を関連付けた対処方法データベースを作成した.さらに,利用者が入力した情報に基づき,疾患を推定したプロセスと,その疾患に対する対処方法項目ごとに最適化された知識を提示することができるプロトタイプを作成し,医療専門家と一般ユーザを対象に使用実験によるシステム評価を行った.その結果,最適化された知識を提供できたと同時に良好な反応を得ることができ,在宅看護 / 介護支援システムとして実用化が可能であることが示唆された.