抄録
【目的】Webユーザビリティ評価法を用いた初期臨床研修医向け鑑別診断学習支援用エキスパートシステムの評価.【方法】日本医療機能評価機構で公開されている初期研修医向け鑑別診断教育用エキスパートシステムを評価対象とし,評価者は鑑別診断に関する実地経験を有する臨床経験3年以上の医師とした.Webユーザビリティ評価法としてWebユーザビリティ評価スケール(WUS)を用い,鑑別診断学習支援機能に関する評価にはビジュアルアナログスケール(VAS)を独自に作成し,郵送調査法(無記名自記式)を行った.統計解析には,統計解析用ソフトウェアはSPSS(IBM, Armonk, NY)とR–VERSION 2.13.0を用いた.【結果】1)WUS開発に関する論文に報告されているWebサイト評価結果と比較して「好感度」「役立ち感」(p<0.01),「操作の分かりやすさ」「見やすさ」(p<0.05)は有意に低値であった.2)「慢性の咳」での「シミュレーションの結果が想定通りであるか」のVAS値において指導医と後期研修医との間,後期研修医と指導医以外の医師との間に統計学的有意差(p<0.05)を認めた.【考察】評価対象システムは,他のWebサイトのWUSよりも全体に低い傾向にありシステムの改善の必要性を認めた.ただ,本研究は調査方法が郵送自記式調査であり,調査対象者にWebアプリケーションの使用方法に対して十分な説明ができなかったことにも起因すると考えられた.【結論】WUSの初期臨床研修医向け鑑別診断学習用エキスパートシステム評価への有用性を認めた.ユーザビリティ評価法は,Web上のエキスパートシステムの設計上の課題を抽出できる可能性を有することが示唆された.