抄録
近年,医療では診療情報を共有するための電子データ交換技術や標準化についての検討が急速に進められている.診療情報には多種多様の情報が存在し,単なる対応関係のみならず,各概念の性質の同一性や違いを考慮して意味的な関係を処理するには,高度な医療知識システムの基盤の構築が求められる.そこで,このような知識基盤の開発を目指し,われわれは臨床医学オントロジープロジェクトにおいて,疾患および解剖学概念の定義を行ってきた.疾患を適切に捉える上で異常状態は最も重要な概念といえる.そこで,本稿では,疾患定義に必要な異常状態の体系化を目指して開発中の異常状態オントロジーについて報告する.本オントロジーは,概念レベルに応じた3階層構造と,多様な異常状態の表現に対応した柔軟な表現モデルを提供していることが特徴である.一貫性のあるわれわれのオントロジーは既存の用語集や標準語彙体系に対し骨格としての知識を与えることができ,高次知識の共有と再利用に貢献すると期待される.