スポーツ理学療法学
Online ISSN : 2758-4356
シンポジウム 2「Acute Intervention」
頭頸部外傷への対応
真木 伸一
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 2 巻 Supplement 号 p. S8

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抄録

ワールドラグビーのホームページで「プレーヤーウェルフェア」を開くと、「ワールドラグビーは、プレーヤーウェルフェアにおいて最も先進的なスポーツになるということに全力を尽くしていることを強調する」とある。選手の安全管理に重点を置くという覚悟を宣言しているわけであるが、なかでも、頭部外傷への対応として脳震盪の管理は年々変化しており、脳震盪を受傷した選手の段階的復帰ガイドラインは2022年に変更されたばかりである。日毎に進歩する科学的根拠に基づいてプレーヤーの安全が強調され、特にレベルの高いカテゴリーではそのガイドラインの遵守が求められるため、情報のアップデートは、現場に出るトレーナー・PTの責務となる。

ラグビーの現場では、日常的に頭部外傷が生じるため、重症度の判断とその後の対応を多く経験する。脳震盪を受傷した選手の回復は、個体差が大きく存在し、遷延する症状も一様ではない。脳の一時的な機能障害によって引き起こされる症状は多様で、脳震盪受傷後に様々な訴えがあることを理解していなければ、症状が残存していることに気づかずに復帰への階段を登らせてしまうことになる。軽微な気分不快や頚部痛は脳震盪と関連ないものと判断されて復帰しているケースも少なくない。頭部外傷に関しては、現場で生じた際の対応について順を追って整理し、その後の管理において注意すべき点を整理したい。

頚椎に生じる外傷は重篤な後遺障害を残す可能性があり、頭部外傷と同様、発生時の対応は訓練しておく必要がある。ファーストレスポンダーとしてのトレーナーの役割は頭部外傷と変わらないが、頸部外傷受傷後の競技復帰には十分なトレーニングが必要である。頸部外傷に関しては平素演者が取り組んでいるリハビリテーション内容をご紹介したい。

スポーツの現場に立つセラピスト・トレーナーは、コリジョンスポーツ以外の現場でなくてもすべからく選手の命に関わる重症外傷への対応を熟知している必要があるため、頭頸部外傷が生じた際の対応手順と、その後のリハビリテーション介入に関して参加される方々と情報を共有したい。

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