医療情報学
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大会企画5
医療・介護分野における情報連携と個人情報保護
石川 広己田尻 泰典山本 隆一上村 昌博高木 有生
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2016 年 36 巻 6 号 p. 337-351

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抄録

 日本国民一人一人の所得の正確な捕捉,税の徴収,社会保障分野での公平な分配などを目的として作られたマイナンバー制度は,平成27年10月にマイナンバーの通知が始まり,平成28年1月からはICチップ付きのマイナンバーカードの配布が開始されている.

 この制度に関しては,計画段階からマイナンバーを医療・介護分野にも導入することが提案されていた.実際,平成21年の民主党政権時代には,医療の現場での利用について,医療現場にいる三師会(日本医師会,日本歯科医師会,日本薬剤師会)にヒアリングが実施された.

 しかし,三師会は当時から「医療情報は機微性が高く,特に遺伝子情報が加わる時代では,漏洩することによって個人の差別や人権問題にも発展しかねない」という主張を医療現場に関わる立場から出し,マイナンバーを医療・介護に持ち込むことに反対をしている.現在でもその主張に変わりはなく,マイナンバーが医療・介護分野で使われることがないように細心の注意を払い続けている.

 また,マイナンバー制度導入の際に並行して,個人情報保護法の改正に関する議論が行われ,これも改正個人情報保護法として平成27年9月に公布された.現在,公布から2年以内の全面施行に向けて省令等の細部の運用が検討されている.

 マイナンバー制度導入の議論と相まって,ここ数年,医療・介護の現場ではICTを用いた情報連携が進んできている.この際,医療・介護の情報連携においても個人を一意的に認識できる番号があればさらに合理的,簡便にできることは明らかである.

 したがって,三師会が中心となり,国民の個人情報を守りながら活用できる,医療等分野専用の番号制度のあり方を検討した.その結果,この番号制のあり方については,政府の方針でも,マイナンバーと切り離すことを前提として「医療等ID」として明記され,厚生労働省を始め医療現場の代表を入れて具体化に向けた議論を進めている.

 本企画では,今までのマイナンバー導入と改正個人情報保護法に関しての議論と今後の医療等IDの実現に向けての課題に関して各方面からの報告を受け議論したい.

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© 2016 一般社団法人 日本医療情報学会
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