日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G2-06
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G2:サブダクションファクトリー
含水条件におけるカンラン岩と玄武岩の相平衡とマントル遷移層・下部マントルの水
*大谷 栄治
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抄録
プレート内部では水は様々な含水鉱物として地球深部に運ばれる。運ばれた水はマントル遷移層に保持される可能性がある。マントル内部にはプレートの沈み込みに関連した4つの脱水帯とマントルプルームの上昇にともなう一つに脱水融解域が存在する可能性がある。 プレートの沈み込みに関連した4つの脱水帯として第一は、蛇紋石や角閃石の脱水分解反応によって、島弧の火山活動が引き起こされる最上部マントルである。第二はマントル遷移層である。マントル遷移層に沈み込む水は、含水E相やウオズレアイトに蓄えられる。マントル遷移層では、プレートの温度条件によっては、E相の脱水分解反応が生じる可能性がある。また、ウオズレアイトが含水量の少ないリングウッダイトに相転移する際にも脱水反応が生じる。第三の脱水帯は下部マントル最上部である。ここでは、プレート内に存在したスーパー含水B相の脱水分解反応と含水リングウッダイトがペロブスカイトとマグネシオブスタイトに分解する際に脱水反応が起こる。第四は、下部マントル深部深さ1200∼1400km付近である。ここでは、下部マントルの含水相D(G)相が脱水分解を起こすことが知られている。 マントルプルームに関連する脱水帯は、上部マントル最下部である。ここでは、水を含んだマントルプルームは含水のソリダス温度が低下することにより、脱水融解を引き起こす可能性がある。地震波トモグラフィ研究によって地震波の低速異常のあるものは、このような脱水域に対応する可能性がある。 MORB––水系の高圧実験によると、ガーネットからペロブスカイトへの相転移圧力が水の存在下で約1GPa程度低圧に移動し、カンラン岩との密度逆転がなくなり、MORB成分は常に重くなる。その結果、カンラン岩と玄武岩層は分離せず、下部マントルに沈降する。一方、無水の条件では、玄武岩層は分離してマントル遷移層や下部マントル最上部に集積する可能性がある。このように、水はプレートの運動に大きな影響を与える。
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© 2003 日本鉱物科学会
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