抄録
菱刈浅熱水性金鉱床は極めて高品位大鉱床のひとつであり,本鉱,山田,山神の鉱床からなる。これらの幾つかの鉱脈と母岩に含まれる硫黄の同位体を測定し,熱水の起源を考察した。鉱床に関係したと考えられる黒園山と獅子間野石英安山岩中に見られるマグマ起源の硫黄は0ないし+2パーミルを示すのに対して,鉱床及び熱水変質の硫黄は-3から+16パーミルまで変化する。比較的重い数値は最末期の不毛黄鉄鉱や鉱脈中の後期の破砕帯の中に認められるが,大半の値は-3から+4パーミルの値を取り,石英安山岩のそれとよく一致する。硫黄のマグマ起源説を支持する。重い値は地表近くで鉱液が一端参加され硫酸根となったものが再び沈降して,ほとんど還元されたことを意味する。