日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G7-01
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G7:火山及び火山岩
北海道礼文島, 13-10Maの火山岩のSr及びNd同位体組成
*平原 由香周藤 賢治
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抄録
1990年代中頃以降に,北部北海道に産する第三紀火山岩について多くの地球化学的データ(主要元素組成・微量元素組成)が報告されてきた.そのようなデータに基づき,火山活動とテクトニクスとの関係についての議論が進展した(後藤ほか,1995;岡村ほか,1995;Watanabe, 1995;広瀬・中川,1999;Ikeda,1998;Yamashita et al.,1999など).地下深所の上部マントルの組成変化などを解明するためには,玄武岩の地球化学的研究が特に重要である.北部北海道に広くみられる中期中新世以降の玄武岩のSr及びNd同位体比の測定結果によれば,次の特徴がある(Shuto et al.,2003)。
 北部北海道の玄武岩は12Ma以降に形成されたものが多いが,これらの大部分は狭い範囲の87Sr/86Sr初生値(SrI=0.70296-0.70393)と143Nd/144Nd初生値(NdI=0.51288-0.51307)をもつ.これらのSrIとNdIには時間的変化はみられない.雄武地域の玄武岩はこれらの大多数の玄武岩よりも高いSrIと低いNdIを有する.
 北部北海道の最北端に位置する礼文島(南北22km,東西6km)における第三紀火山活動は,約18Ma以降,3期(約18Ma,約13Ma,約10Ma)にわたって起こっている.礼文島に産するこれらの火山岩を形成したマグマ活動の成因を明らかにすることは,北部北海道の火山活動場の特徴を解明する上で重要である.今回は火山岩の主要元素組成・微量元素組成及びSr, Nd同位体組成などに基づき礼文島の火山活動場についての考察を行う.  礼文島の火山岩の特徴を以下にまとめる.
(1) 礼文島の新第三系は下位より元地層, 香深層, 浜中層より構成される. 島の北部には香深層と同時異相の関係にある召国層が分布する.
(2) 礼文島の新第三系火山岩は元地層の安山岩質溶岩(SiO2=56.7∼68.7wt%), 香深層の玄武岩質~安山岩質火山角礫岩及び溶岩(SiO2=52.3∼63.0wt%), 元地層を貫入するデイサイト質貫入岩体(SiO2=61.2∼62.6wt%), 召国層と浜中層を貫入するドレライト質貫入岩体(SiO2=51.2∼59.1wt%), 召国層に覆われるアルカリドレライト(SiO2=54.35wt%)である. 香深層の玄武岩質火山角礫岩からは10.4±2.2Ma, 元地層を貫入するデイサイト質貫入岩体からは13.0±1.6Ma, 召国層に覆われるアルカリドレライトからは18.2±1.2MaのK-Ar年代値が報告されている(Goto and Wada, 1991; 後藤ほか1995). 礼文島の火山岩は全てSiO2-FeO*/MgO図でMiyashiro(1974)によるカルクアルカリ系列に属する. K2O含有量は香深層を除きGill(1981)による中カリウム系列に属する. 香深層の火山岩は低カリウム系列に属する.
(3) FeO*/MgO<1.5以下の試料をMORBで規格化した液相濃集元素のパターンはNbの負異常を示し, LIL元素に富みHFS元素に乏しい島弧的マグマの特徴を示す.
(4) Sr, Nd同位体組成はSrI=0.7037∼0.7040, NdI=0.5128∼0.5129である. 元地層の安山岩質溶岩とデイサイト質貫入岩体はSiO2含有量が高いが, アルカリドレライトと同程度に比較的枯渇した同位体組成を示す(SrI=0.7037, NdI =0.5129). 香深層の玄武岩∼安山岩及びドレライト質貫入岩体はSiO2含有量の増加に伴いSrIは増加し(0.7038→0.7040) ,NdIは減少 (0.5129→0.5128)する.
 以上のように,礼文島の玄武岩質岩石のSrIとNdIは北部北海道に産する他の多くの玄武岩(雄武玄武岩を除く)のSrIとNdIの範囲内の値を示す.これは礼文島の玄武岩質マグマが他の玄武岩質マグマとともに,同位体的に共通のマントル物質から生成されたことを示唆している.北部北海道の中新世以降の玄武岩質マグマは,日本海あるいはオホーツク海の拡大に関連して,深部から上昇した枯渇した(MORBの起源マントルよりもエンリッチした)アセノスフェア性マントルから生成されたものと考えられている(Shuto et al.,2003). 礼文島の玄武岩質岩石のSrIとNdIは,アセノスフェア性マントルの上昇が北部北海道の広い範囲に及んだことを示唆している.
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© 2003 日本鉱物科学会
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