抄録
火山噴出物の形状や組織の多様性は,マグマが火道を上昇する際など,噴火・堆積過程において被った現象の相違に起因する.特に,軽石など爆発的噴火によって生じた噴出物には,マグマ上昇の際の現象が組織などに保存されるため,形状や組織を解析することによって,その現象に関する知見を得ることが可能である. 有珠火山では有史以降,噴煙柱を形成する爆発的な噴火が5回発生しており,その軽石は多様である.本研究ではその例の1つである1977年に起こった有珠火山のプリニアン噴出物,特にBig. I(katsui et al., 1978)噴出物の岩相,構成粒子の量比,軽石の形状や組織に注目してキャラクタリゼーションを行った. 1977年噴火はBig I_から_IVの4回の噴煙柱を立ち上げる大規模な噴火で特徴付けられる.(katsui et al., 1978).Big. Iの噴煙柱の挙動は詳細に観測されており,段階的に成長し,急激に減衰したと報告されている(新井田・他,1982).Big. I堆積物は明瞭な境界を持つ4つのフォールユニットに区分できる.これは,噴煙柱の段階的成長,急激な減衰に対応していると考えられる. 上記3色の軽石間で岩石組織を比較した結果,斑晶の量はほとんど変わらないが,発泡度は白色軽石で高く,明灰色軽石,暗灰色軽石で低いことがわかった.石基の結晶度は白色軽石で低く,明灰色軽石,暗灰色軽石で高い.ここで発泡を含む石基の組織は,マグマが火道を上昇するときに被った現象を記録していると考えられるので,白色軽石はマイクロライトが十分に成長することができないほど上昇速度(冷却速度)が大きいマグマによって生成したと推測できる.また明灰色軽石,暗灰色軽石は,冷却速度が相対的に遅くマイクロライトが晶出したことによって,気泡の析出が妨げられたことも発泡度が低いことの一つの原因であると推測できる. Big. I堆積物について,これらの本質物質と異質物質の鉛直方向の量比変化を調査した.その結果,噴煙柱高度が最も高かったときの噴出物は,相対的に白色の軽石,繊維状の軽石,異質物質に富んでいる.このことから,噴出率が増加することと,異質岩片,繊維状軽石,白色軽石が増加することとの間には相関関係があると判断される.