日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G7-15
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G7:火山及び火山岩
マグマを模擬した2つの対照的な珪酸塩融体の混合による諸物性の変化
*金杉 諭後藤 章夫谷口 宏充
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抄録
粘性率,密度,ガラス転移温度,表面張力などのマグマの物理的性質は,噴火機構やマグマの成因を議論するうえで重要である。一方,対照的な化学組成(例えば玄武岩と流紋岩)を有する2種類のマグマが混合することによって、マグマの物性は変化しその挙動も著しく変化すると考えられる。混合に伴って生じる新しいマグマの化学組成は単純な足し算で予測できるが、その物性は単純な足し算に従わないことが明らかにされてきている(Richet, 1984 Tauber and Arndt, 1987 etc)。そこで、マグマを単純な模擬物質で見立て、化学組成と温度とをパラメータとして密度と粘性率そして表面張力の測定を行い、2融体の混合によりその中間組成の物性がどのように変化するか確認した。加えて、粘性的な挙動を取りえる限界とみなせるガラス転移温度も測定した。
今回の研究では、マグマの模擬物質として透輝石(Di)_-_カリ長石(Or)系融体とオケルマナイト(Ak)_-_灰長石(An)系融体を用いた。どちらの成分系においても、玄武岩質マグマから流紋岩質マグマまでを網羅する広い組成範囲で、構造的にマグマを模擬できる2成分系である。特に、Ak_-_An系融体は珪酸塩の骨格構造がばらばらなdepolymerized melt から、骨格構造が網目状に重合したpolymerized melt までを網羅しており(Taylor and Brown, 1979 Paul Mcmillan , 1984)、構造的に対照的であり非常に興味を持てる2成分系である。
密度は、高温域では2球を用いたアルキメデス法(Stain et al, 1986)、低温域ではTMAによる熱膨張曲線を用いて測定した。粘性率は、高温域では球体引き上げ法(Murase and McBirney, 1973)、低温域ではガラス繊維引き伸ばし法(Taniguchi. 1992)を用いて測定した。表面張力は、高温域でピン接触法(Taniguchi, 1988)を用いて測定した。ガラス転移温度はDSCまたはTMAを用いて測定した。
密度は、温度が上昇する、またはpolymerized meltに近づくに従って低下し、熱膨張係数はガラス転移温度を境にして急激に変化した。次に、粘性率は、温度が上昇する、またはdepolymerized meltに近づくにつれ低下した。表面張力については、現段階でデータ不足のため詳しくは分からないが、基本的には温度の上昇とともに低下する傾向があるようだ。ガラス転移温度はpolymerized meltに近づくにつれ高温側にシフトした。全てに共通した結果は、中間組成では単純な足し算、いわゆる加成性が成立しないことが挙げられる。粘性率を例に取ると、加成性から計算できる値よりも低い測定値が得られた。このことは、マグマの混合により生まれた新しいマグマは予想より粘性率が低く流動しやすいことを意味している。混合後のマグマの挙動について予測するために、その他の物性についても、混合による変化を詳細に研究していく必要があると考える。
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© 2003 日本鉱物科学会
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