抄録
四重極質量分析計(QMS)は極微量のガス成分の検出に広く利用されているが、磁場型質量分析計とは異なり、質量電荷比(m/e)の低い値から高い値までを、連続的に極短時間(1秒以内)で走査できるという長所を備えている。この特性を利用し、鉱物中に含まれる流体包有物を加熱し逐次破裂(デクレピテーション)させ、放出されたガスを直ちにQMS に導入することにより、破裂温度ごとの流体包有物のガス組成を求めることが可能となる。
この方法の利点は、
1) ガスを流体包有物から抽出するために試料を粉砕する必要がなく、試料表面へのガスの吸着(=ガス組成変化)を最小限にできる。
2) 常に排気しながら測定を行うため、低いバックグラウンド(4x10-6Pa以下)での測定が可能である。
3) 低いバックグラウンドでの測定が可能なため、試料は極少量(約50mg)で済む。
4) 加熱中にQMSで検出された各質量数の平均イオン電流を求めることにより、バルクガス組成を求めることが可能である。
本研究では、[1]により確立された、QMSを使った多成分ガスの定量方法を応用し、流体包有物を130∼650℃の温度範囲で、真空中で約30分かけて徐々に加熱し、破裂により放出されたガスをQMSで2秒間隔で測定する分析システムを構築した。
本分析方法を天然のペグマタイト石英中の流体包有物のガス分析に適用した結果、水の定量に非常に有効であることが確認できた。また、温度上昇に伴うイオン電流の変化曲線(リリースカーブ)には地域ごとに特徴が見られ、特に流体包有物中にCO2の多い地域(福島県石川ペグマタイト、岩手県崎浜ペグマタイト) は、リリースカーブのピークが低温側に偏る傾向があることがわかった。
すべての石英試料で573℃付近において、リリースカーブに鋭いピークが確認された。これは、石英のα‐β転移時の結晶構造の変化に伴い、内圧の高まった流体包有物が大量に破裂をおこすためであると考えられる。このピークと形をあわせるように、質量数 33,34 に弱いピークが確認された。これは流体包有物中にH2Sの存在を示すものであると考えられる。
参考文献:[1] 釜島・森清(2003): 岩石鉱物科学 32,1-11