抄録
斜長石双晶形式と岩石学的な関係に関して約半世紀前に多くの研究が行なわれ,当時の地質学的諸問題,特に花崗岩成因論に寄与した(例えばGorai, 1951).その後,花崗岩成因論の主たる課題であった花崗岩化作用の議論が一段落つくとともに,斜長石双晶法を検討することは少なくなっていった.しかしながら,岩石の種類により斜長石双晶形式が異なるという厳然たる事実は依然としてあるわけで,近年における地質現象のグローバルな解析結果と絡めて斜長石双晶を新たな問題意識でとらえ直すことには意義がある. 演者は国内外で深成岩や変成岩の地質調査を行うとともに,それらに含まれている斜長石の双晶形式を解析してきた.その一方,斜長石双晶の解析法自身の改良も行ってきた.小論ではこれまでに行なった様々な地域の花崗岩類と変成岩類中の斜長石双晶形式解析結果をC双晶(アルバイト及びペリクリン双晶以外の全ての双晶)とペリクリン双晶の頻度で比較検討した. 花崗岩類に関して、2つの地域が対照的な斜長石双晶形式頻度を示す.一つは領家-山陽帯の花崗岩類で,ある程度(10%から40%)のペリクリン双晶を含み,C双晶頻度は広い範囲の値(5%から40%)を示す.もう一つは東南極セールロンダーネ山地の花崗岩類で,C双晶頻度は広い範囲の値(0%から30%)を示すもののペリクリン双晶をほとんど含まない(5%以下). Pitcher(田中・沓掛訳,2002)のp.52に述べられているように,大陸縁辺活動域では花崗閃緑岩が卓越し,マグマ上昇過程の比較的早いうちに固相の比が大きくなり,臨界メルト残量を越え粘性が大きくなる.一方,大陸内部ではアルカリ花崗岩が主で,そのため,マグマは上昇定置後固結直前までメルトの比が大きく粘性が小さいためにニュートン流体として振る舞う.結果として領家-山陽帯の花崗岩類で代表されるように大陸縁辺域のマグマ中の結晶は,応力を受け剪断歪みを生じやすくペリクリン双晶を形成しやすいが,セールロンダーネ山地の花崗岩類のように大陸内部のマグマでは,結晶に剪断歪みを生じにくくペリクリン双晶を形成しにくいのかもしれない. 石英長石質の変成岩類のうち,低度の変成岩類(緑色片岩相から低度角閃岩相)では少量のペリクリン双晶を含む.これに対して高度の変成岩類(高度角閃岩相からグラニュライト相)では少量から中程度の量のペリクリン双晶を含む.剪断作用を受けた高度変成岩類は多量のペリクリン双晶を含む.これらは,高温下で剪断応力を受けるとペリクリン双晶を生じるという既存の実験結果から説明できる.