日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: C-31
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C:岩石・鉱物・鉱床学一般
宮崎県西米良村天包山北斜面アンチモン鉱床産鉱石鉱物
*上野 禎一榊 昌宏渡辺 隆人岩野 庄市朗棟上 俊二
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抄録
宮崎県児湯郡西米良村天包山北斜面にアンチモン鉱床跡があることが、藤本(1999a)により明らかにされ、輝安鉱及びその随伴鉱物に関して藤本(1999b)、仙波(2000)、山中・藤本(2001)、平松他(2001)により報告された。日本地方鉱床誌九州地方には、天包鉱山というのは明治・大正時代に稼行されたアンチモン鉱床と記されている。2002年12月、発表者らは天包山北斜面のアンチモン鉱床跡を調査し、小規模な坑口及び坑道(奥行き10m程)を発見、付近に残されていた貯鉱を採取した。藤本(1999b)が指摘したように貯鉱は真新しく大正時代に閉山した鉱床産のものではなく、最近の試掘によって得られたものであろう。採取した鉱石鉱物を実体顕微鏡及び反射顕微鏡で観察したところ、輝安鉱以外に数種類の金属鉱物が存在することが判明したので、今回その研究結果を報告する次第である。鉱床母岩は四万十層群に属する黒色スレートで、それに石英脈が貫入し多量の輝安鉱を生成している。関連火成岩は四万十層群に貫入している花崗斑岩と思われるが、野外でまだ両者の接触部が確認されていないため直接の運鉱岩かどうかは不明である。この花崗斑岩は、長石の巨晶(2cm×4cm程度)を含むのが特徴的であるが、風化が著しく新鮮な試料は得難い。鉱石鉱物は、輝安鉱の他は、肉眼的には黄鉄鉱・閃亜鉛鉱が見られ、晶洞中には輝安鉱の表面に散点状に赤色のダイヤモンド光沢を有する鉱物が観察され、時に0.5mm程の菱面形の平板状結晶集合体となっている。この種の鉱物は、山中・藤本(2001)により火閃銀鉱であると報告されたが、平松他(2001)により他に紅安鉱又は濃紅銀鉱の存在可能性も示唆されていたので、今回、高出力回転対陰極X線回折計で調べたところ濃紅銀鉱のパターンを示した。反射顕微鏡下では青灰色で鮮赤色の内部反射を伴っており、EPMA分析では、Cu, Znを微量含むAg3SbS3組成を示すことから濃紅銀鉱であることが判明した。既に、仙波(2000)により報告されているが、別の晶洞中には輝安鉱と関連して扇形の放射状に伸びた淡黄色のダイヤモンド光沢を有する鉱物が見られ、X線の結果バレンチン鉱であることが確認された。反射顕微鏡で詳しく観察すると輝安鉱と共生してしばしば茶桃色で弱い異方性(暗茶色∼暗緑茶色)をもつ鉱物と、青白色で強い異方性(明茶色∼暗緑灰色)をもつ鉱物が見られた。EPMA分析では、前者はCuを28wt.%, Agを18wt.%, Sbを27wt.%程含み、(Cu,Ag,Fe)12Sb4S13に近い組成を示すことから輝安銅銀鉱と、後者はAgを36wt.%, Sbを41wt.%程含み、(Ag,Cu,Fe)SbS2に近い組成を示すことから輝安銀鉱と同定された。Fe-S系の鉱物は黄鉄鉱のみで、磁硫鉄鉱がみられないことと輝安鉱と共生する閃亜鉛鉱のFe含有量が1.5at.%程であることから硫黄フガシティーの高い鉱液によりこのアンチモン鉱床は形成されたと考えられる。
引用文献
藤本(1999a):福岡石の会会報1999,pp.41-50.藤本(1999b):福岡石の会会報1999,pp.51-53.平松・仙波・伊達(2001):福岡石の会会報2001,pp.53-56.仙波(2000):福岡石の会会報2000, pp.6-8.山中・藤本(2001):福岡石の会会報2001,pp.50-52.
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© 2003 日本鉱物科学会
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