日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: C-32
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C:岩石・鉱物・鉱床学一般
Tagish Lake隕石,Orgueil隕石,Ivuna隕石中のcarbonaceous globules:透過型電子顕微鏡観察による産状の比較
*中澤 彩子三日田 純一野口 高明中村 智樹
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抄録
1.はじめに carbonaceous globules(以下CG粒子とする)はTagish Lake隕石ではじめて見つかったアモルファス炭素質粒子で,太陽系形成初期に作られた物質であると考えられている[1]。本研究では,CG粒子の成因についてさらに検討するため,Tagish Lake (carbonate rich lithology [2]),Orgueil,Ivunaの3つの炭素質コンドライトについて,透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてCG粒子の産状を調べた。TEM観察試料は超薄切片法で作成した。本研究では,エネルギー分散型X線分光器(EDS)が軽元素を検出できない仕様のため,Naより重い元素の特性X線のピークが見られないもので,Tagish Lake隕石で見出されたCG粒子と似た産状の物質をCG粒子であると判断した。2.観察結果Tagish Lake隕石(carbonate rich lithology):約0.4個/100μm2の数密度でCG粒子が存在する。大きさは50から400nm,平均約250nmであった。GC粒子のほとんどは[1]と同様に中心部分が空洞になっていた。CG粒子はそれぞれ独立の粒子として存在する。Orgueil隕石:切片ごとにCG粒子の存在量に違いがあった。最もCG粒子の多い切片では,約2.1個/100μm2の数密度でCG粒子が存在し,さらにCG粒子が数個集まった集合体が一つ(約0.5個/100μm2)見つかった。CG粒子の少ない切片では,約0.7個/100μm2の数密度でCG粒子が存在していた。CG粒子の大きさは170から700nm,平均約400nmである。CG粒子の中心部分は空洞状になっている。Ivuna隕石:1.5個/100μm2の数密度でCG粒子が存在していた。CG粒子の大きさは約170から640nmであった。中心部分が空洞状になったものは少ない。CG粒子の集合体も見られた。3.議論 CG粒子の数密度は,Tagish Lake隕石のcarbonate rich lithologyでは,同じ隕石のcarbonate poor lithology(1/100μm2,[2])よりかなり少ない。今回の観察では,CG粒子の周囲の層状珪酸塩にsaponiteとserpentineが互層しているものが観察された。これは,CG粒子を含むcarbonate poor lithologyの小片がcarbonate rich lithology中に取り込まれたものと考えられる。[1]において,CG粒子はcarbonate poor lithologyに見られると述べられていることと一致する。一方,Orgueil隕石とIvuna隕石におけるCG粒子の数密度は同じ程度であり,[1]よりもやや大きい。典型的なCIコンドライトであるIvunaとOrgueilではCG粒子の集合体が見られたが,Tagish Lakeでは見つかっていない。独立して産するCG粒子の形状は球形もしくは楕円形である。周辺組織の多くは粗粒の層状珪酸塩であるが,細粒層状珪酸塩の場合もある。CG粒子の周りを数層の層状珪酸塩がその外形に沿って取り囲んでいるものも3割程度の粒子で観察された。しかし,粒子を層状珪酸塩の脈が切っているものは見出されなかった。CG粒子が集合体で存在する場合は粒間を層状珪酸塩が埋めている。これらの組織は,どの隕石においてもCG粒子の形成と層状珪酸塩の形成時期が大きくは異なってはいないことを示唆していると考えられる。[1] Nakamura, K. et al. (2002) Internat. J. Astrobiology, 1, 179-189.; [2] Nakamura, T. et al. (2003) EPSL, 207, 83-101.
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© 2003 日本鉱物科学会
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