日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2004年 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G4-24
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G4:深成岩および変成岩
徳島県東部四万十北帯を貫くSrに富む高マグネシア閃緑岩
*村田  守谷 享子小澤 大成西村 宏
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抄録
  花崗岩は大陸地殻の主要部を構成するので,これを研究することは大陸地殻の形成を研究することでもある。古来造山運動の中心として花崗岩成因論が論じられてきたことから分かるように,花崗岩の生成は限られた時間・地域に限られるという特徴がある。これは定常的なプレートの沈み込みに伴う火山岩の生成とは根本的に異なるところである。定常的なプレートの沈み込みが想定される日本列島の多くの花崗岩帯においては,花崗岩を形成するための熱源を特定することが必要であろう。この熱源として,リッジサブダクションとそれに伴われるスラブウィンドーマグマティズムがある。リッジサブダクションや若いスラブの沈み込みには,アダカイト・アダカイト質花崗岩や高マグネシア安山岩が伴われているので,逆にこれらの岩石の存在から,リッジサブダクションや若いスラブの沈み込みについて検討することができるであろう。 白亜紀の西南日本内帯の領家帯・山陽帯では,アダカイト質花崗岩・高マグネシア質安山岩の発見(木村・貴治,1993;貴治ら,1995,2000;Kamei et al., 2004)があり,リッジの斜め沈み込み(Kinoshita, 2002,2004)やスラブウィンドーマグマティズム(Murata et al., 2003)も検討されている。一方,中新世の西南日本外帯花崗岩の特徴は,14Maの同時代性と同時期の高マグネシア安山岩が瀬戸内帯に主に分布することである。外帯の中新世高マグネシア安山岩として田辺層群を貫く例が三宅ら(1985)によって報告されているにすぎない 我々は,外帯花崗岩の形成条件(5kb・700°C;村田,1987)の熱源が,若くて熱いスラブの沈み込みあるいはリッジサブダクションではないかと考え,それらに特徴的に伴われるアダカイト質岩や高マグネシア安山岩を探索してきた。その結果,徳島県東部の四万十帯北帯を非調和的に貫くSrに富む高マグネシア閃緑岩を見いだしたので,報告する。 本岩帯は,徳島県那賀郡相生町に5m x 15m程度の東西性の小岩脈として分布し,四万十北帯との境界では一部破砕され,ミロナイト化している。本岩体の一部は野沢・稲井(1972)によって,下雄閃緑岩として概略が報告されている。主要構成鉱物はCa角閃石・斜長石の中粒閃緑岩である。全岩化学組成の特徴は,SiO2が52から56%で,MgOが9%以上を示し,高マグネシア安山岩と同様の組成を示す。また,Srに富み(390から500ppm),Sr/Y比も21から30と高い。NiとCr含有率からは,transitional adakitesに分類される。したがって,本岩体はアダカイト・高マグネシア安山岩の貫入岩相と見なすことができる。今後は,これらの岩石の放射性年代の測定と同様の組成を示す小岩体の探索が必要であろう。
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© 2004 日本鉱物科学会
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