日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2004年 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G4-27
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G4:深成岩および変成岩
東南極ナピア岩体,珪長質・苦鉄質岩の化学組成から見た太古代地殻-マントル相互作用
*大和田 正明小山内 康人加々美 寛雄
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抄録
太古代の火成岩の多様性は、すでに幾つかの異なる組成のリザーバーが存在したことを示唆する。本発表では、Nd同位体組成や希土類を含む化学組成の特徴から、リザーバーの端成分と考えられる地殻とマントルの相互作用に焦点をあて、太古代ナピア岩体の原岩形成過程を議論する。 ナピア岩体の珪長質岩は、他の岩相と共に数十センチ規模の層状に産する型と厚さが数十メーターかそれ以上に達し塊状の型に区分される。後者の型は、しばしば苦鉄質岩や超苦鉄質岩をブロックとして包有する。一方、苦鉄質岩は、数十センチから数メーターの層厚で産するが、数十メーターに達することもある。まれに、周囲の岩相境界あるいは面構造に斜交して産する。このような産状から、珪長質岩と苦鉄質岩の一部は、もともと貫入岩であったと考えられている。また、これらの原岩形成年代はおおよそ35- 37億年とされている。 珪長質岩の特徴は、(1)有色鉱物は斜方輝石のみか、斜方輝石と単斜輝石、(2)(La/Yb)N>80、 (3)NdI (3.5Ga)< 0.50795で、これらの特徴を示す珪長質岩には、Cr含有量が160 ppm以上に達する岩石が含まれる(以後、High-Cr珪長質岩)。このような岩石は、しばしば超苦鉄質岩のブロックを包有している。High-Cr珪長質岩中の輝石は、高マグネシウム安山岩やボニナイト中の輝石組成に類似するCr含有量を持つ。Crは変成作用においても動き難い元素であり、輝石への分配が大きいことから、High-Cr珪長質岩は変成作用を受ける以前からCrに富んでいたことが示唆される。High-Cr珪長質岩に伴われる超苦鉄質岩は、(1)Opx>>Cpx(2)An<65の斜長石、アパタイトおよびフロゴパイトからなる脈が発達している、また、(3) (La/Yb)N=4.41、(4)NdI(3.5Ga=0.50811 である。一方、苦鉄質岩は、(1)(La/Yb)N>2、(2)NdI(3.5Ga)0.50780から0.50817である。 Cr含有量が20ppm以下の珪長質岩の化学的特徴はCr含有量を除くとHigh-Cr珪長質岩と類似する。そして、これら珪長質岩の化学的特徴は、太古代のTTGやHigh-Mg閃緑岩のそれと類似する。La/Yb比が大きいのは、珪長質岩のマグマが形成された時、 Ybへの分配が大きいザクロ石が溶け残り物質中に存在していたことを示唆する。そして、High-Cr珪長質岩をもたらしたマグマは、比較的高圧で溶融した地殻物質がマントルと反応することで生じたと考えられる。 一方、High-Cr珪長質岩に伴われる超苦鉄質岩はLa/Yb比が高い。また、Nd同位体比初生値からみて、地殻成分の関与が示唆され、DM と上述の珪長質岩の混合によって生じたと推察される。その時の混合比はDM:珪長質岩=1:9と計算される。このような汚染されたマントルが部分溶融することで、LREEに富む苦鉄質マグマが生じたと考えられる。
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© 2004 日本鉱物科学会
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