抄録
近年,大規模なイグニンブライトの活動を伴うカルデラ群のエピソディックな形成で特徴づけられるLSVF(large silicic volcanic field)が,広域の花崗岩バソリスの形成に匹敵する珪長質火成活動の一様式として注目されている(例えば,Coney, 1972; Lipman, 1984; Ducea, 2001; de Silva and Zandt, 2004)。Yamamoto(2003)は,東北本州弧後期新生代のカルデラ火山活動が,西南日本における白亜紀花崗岩類の活動に対比できるものであることを,両者の年代学的データの比較から論じている。また,吉田ら(1999)は,地震学的データなどを引用しながら,後期新生代,東北本州弧における80を超えるカルデラ火山の形成を伴う火山活動は,地殻浅所への大量の珪長質マグマの定置によるものであり,北上山地に分布する白亜紀花崗岩類の活動に匹敵するものであると論じている。 LSVFは,非常に単調な組成(カルクアルカリ質デイサイト_から_流紋岩)のイグニンブライトの噴出を伴う大規模カルデラ火山群が,広域に,しかも数百万年オーダーの期間にわたってエピソディックに活動することで特徴づけられる。一般にはその活動は,活動的大陸縁辺部での新生代火山活動を特徴づけるものとして知られているが,東北本州弧を含む一部の背弧海盆を伴う島弧においても,その活動が明らかにされてきている。大平洋を囲む様にして分布する,それらの活動時期は中新世から鮮新世にかけて,複数の活動のピークが認められ,de Silva and Zandt(2004)によりCenozoic flare-upと呼ばれている。このようなLSVFの解明は,白亜紀における花崗岩マグマの活動を理解し,大陸地殻の形成発達機構を解明するうえでも極めて重要な研究課題であると言える。 本発表では,LSVFについてのレビューを行なうとともに,後期新生代,東北本州弧における大規模カルデラ火山活動の特徴と,LSVFとしての重要性を論じる。