抄録
マグマ中に溶存するH2O, CO2, S, Clなど揮発性物質は、マグマの地表付近への上昇減圧もしくは固化により、火山ガス・熱水として放出される。揮発性物質の放出経路は主に、1)火山噴火による火山ガスの放出、2)定常的噴気・噴煙活動による放出、3)温泉・地下水からの放出、4)広域的な放出、などに分けられるが、3)、4)の推定例は未だ限られている。火山噴火および定常的な噴気・噴煙活動により、地球全体でそれぞれ年間約10Tg(日量にして約2万7千トン)のSO2が放出されていると推定されている。SO2以外の火山ガス成分H2O, CO2, H2S, HCl,HF等の放出量の推定は、噴気ガスとSO2放出量から求められているが、通常噴気ガスは低温である事が多く、大規模な噴煙活動や噴火により放出される火山ガス組成とは異なる事が予想される。筆者らは新たに開発した測定手法による噴煙組成の測定を代表的な火山で始めており、多くの日本および世界各地の火山のデータの蓄積により、各成分の放出量の推定を目指している。
火山噴気による放出量は膨大であるが、気体として直接大気に放出されるため、局所的な影響は余り及ぼさない。それに対し、火口周辺にひろく見られる酸性変質などは、大気中に放出された火山ガスではなく、地下で火山ガスが地下水に吸収される事により生じた酸性の溶液との作用により生じている。このような溶液(温泉・熱水)は量的には少なくとも、岩石などと直接反応をするため、変質や沈殿の形成などが効率的に生じ得る。熱水の組成は、マグマ起源の揮発性物質組成(例えばCl濃度や硫酸濃度)のみならず、岩石との反応条件(温度・圧力)により組成が支配されている。火山は地下のマグマ溜まりから高温高圧の熱水も供給するため、多様な温度圧力条件下で熱水反応が生ずるための場でもある。火山性熱水系における元素の移動などを考察の上では、この「場としての火山」と、「物質供給源としての火山(マグマ)」を区別する事が必要である。