日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
原著
中山間地域居住医療機関通院者の孤独感と健康度の関連:質問紙調査を用いた観察横断研究
久田 祥雄杉岡 隆
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 71 巻 1 号 p. 1-11

詳細
抄録

 医療機関を利用している農村地域居住者の孤独感が健康度に及ぼす影響について,個人の属性および生活習慣や人間関係と合わせて評価するため,中山間地域のへき地拠点病院と関連診療所利用者149人に対して質問紙調査を行なった。対象の属性として,性別・年齢・世帯状況・婚姻状態・収入・学歴・就労状況を,生活習慣として,肥満の有無・喫煙歴・飲酒習慣を測定した。孤独感の測定にはshort-form UCLA(3~9点)を用いた。人間関係は,現在の人との付き合いかたは自ら選んだかものであるかどうかを聴取した。健康度の評価には,WHO/DAS 2.0の12項目(0~48点)を用いた。有効回答の得られた108名で解析を行なった。男性47名,女性61名,平均年齢74.1歳,肥満30人,喫煙歴40人,飲酒習慣あり38人,UCLA得点平均4.08±1.34,WHO/DAS 2.0得点平均7.68±8.84,望んでいない人間関係と回答したのは5人であった。UCLA 4点以上58人を孤独あり,WHO/DAS 2.0得点7点以下66人を健康度が高いと定義し,孤独の有無と健康度で2群に分けて関連をみた。単変量解析では,孤独感が高いと健康度が有意に低くなった(オッズ比0.29,95%信頼区間0.11~0.72,p値0.003)。本検討を行なった集団では,高齢者,女性,独居世帯,離別・別居・死別者,義務教育までの教育歴,無職・離職状態,飲酒習慣なし,孤独ありのグループで健康度が有意に低かった。これらの要因で調整しても,孤独感が高いことで有意に健康度が低くなった(オッズ比0.11,95%信頼区間0.02~0.43,p値0.002)。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本農村医学会
次の記事
feedback
Top