抄録
下雄閃緑岩は,徳島県那賀郡相生町に5mx15m程度の東西性の小岩脈として分布する。これらは点在する5岩体からなり,互いの貫入関係はない。5岩体は有色鉱物の量比のちがいによる岩相変化は認められるが,鉱物組み合わせは角閃石・斜長石で同じであり,中粒閃緑岩として一括できる。全岩化学組成の特徴は,主要成分・微量成分ともになだらかな変化経路を示しているが,その組成変化幅が広く,アダカイトから高マグネシア安山岩までの組成範囲を示すことである。一方,鉱物の化学組成は変化に乏しい。鏡下観察では典型的な集積組織を示さないが,これらの岩相変化は鉱物のモード比を反映しており,角閃石の集積によるものと考えられる。