抄録
症例 77歳 女性2001年(74歳時)糖尿病を指摘され、近医で内服加療を受けていた(アマリール3.5mg/day)が、コントロール不良(HbA1c 9.2%)とのことで当院へ紹介入院。既往歴としては、虫垂炎手術、子宮筋腫手術、胆嚢摘出術あり。家族歴では糖尿病なし。02年7月入院時、身長154.2cm 体重44.5kg BMI 18.8、血圧152/92、HbA1c 9.2%、尿中Cペプチド 64μg/day、抗GAD抗体 7.71U/ml。糖尿病合併症としては、網膜症なし、腎症なし、下肢しびれ感と振動覚低下を認めた。独居であり、ADLは保たれていたが内服管理はあやふやであり、本人も半年ほど前より物忘れがあると自覚していた。入院中、スタッフにより内服の確認を行ったが、血糖コントロールは不良であり、インスリン治療を併用。GAD抗体陽性であることより退院後もインスリン治療が望まれたが、手技の習得は困難であると予想され、またご本人も拒否されたためオイグルコン2.5mg/dayとベイスン0.6mg/dayの併用にて退院となった。退院後は近医でフォローされていたが、3週間後、やはりインスリン自己注射をしてみます、とのご本人の意思があり再入院されるも、やはり自己注射は避けたいと言われ、自己注射は断念。ご兄弟よりも物忘れが進行しているとの情報あり、当院物忘れ外来で精査したところ、MMS 22/30とsubnormalであった。退院2ヵ月後、全身倦怠感と体重減少(-2.5kg)を主訴に入院(HbA1c 9.4%)。入院時よりインスリン併用にてコントロール改善。退院後は近医の協力もあり、イノレットN 15単位を毎日、近医もしくは当院で行うこととした。その後、インスリンを2回打ちにされるもコントロール不良が持続。近医フォロー中に徐々にインスリン注射手技を習得され、自己注射へ移行していた。約1年後、近医でしかられたと誤解され当院へ入院希望あり。インスリン注射手技確認および血糖コントロール目的に入院(HbA1c 8.9%)。退院後、毎週外来に同じ時間に受診してもらい、インスリン量や内服内容の変更を避け、インスリンや内服薬の残量確認など行った。現在までのところ、重症低血糖などのトラブルはなく、体調も良好とのことでHbA1c 7.7%とやや改善し、再度本人希望により近医でのフォローとなった。