抄録
紀伊半島西部の西南日本外帯は,北より三波川変成帯,秩父累帯,四万十帯が帯状に分布し,毛原層は,和歌山県清水-美里地域に東西約5km,南北約1kmにわたって帯状に分布する.今研究では,毛原層の塩基性片岩の鉱物組み合わせを示すとともに,変成岩の組織と変成鉱物の化学組成等から,毛原層の変成作用と変成履歴について考察する.
その結果,(1)藍閃石+パンペリー石の組み合わせが見られることから,毛原層は藍閃石片岩相の低温高圧型の変成作用を被っている.(2)アクチノ閃石に取り囲まれた藍閃石があることから,藍閃石片岩相の変成作用の後にアクチノ閃石が形成された変成作用が考えられる.(3)Na-単斜輝石が形成され,その外側に低ひすい輝石成分の透輝石が形成されていることから,Na-単斜輝石の形成後,透輝石が形成された変成作用が考えられる.