抄録
本研究では高温高圧セルを開発し、顕微赤外-ラマン分光計とを組み合わせることにより、高温高圧環境下での薄膜水の赤外およびラマン分光測定装置を開発した。セルには窓材としてダイヤモンドを使用し、セル試料室内に水が薄膜状(厚さ1μm程度)に広がり、400℃、50MPaまで保持することが可能である。薄膜水の赤外吸収スペクトル測定結果から、OH伸縮振動のピーク波数は高温ほど高波数側に移動し、一定温度では高圧ほど低波数側に移動する結果となり、OH伸縮振動波数は水素結合強度の尺度であるから、温度・圧力条件により水素結合強度が変化しているのが観測された。さらに、固体試料を用いて、固体表面の薄膜水の赤外分光測定を行ったところ、薄膜水の赤外吸収スペクトルは基盤となる固体試料によって異なる結果となり、固体表面との相互作用により固体界面の薄膜水が分子レベルで構造変化を起こしていることが推察される。