オレオサイエンス
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特集総説論文
界面活性剤吸着膜で安定化された泡膜の膜厚と分離圧測定
松原 弘樹
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2024 年 24 巻 6 号 p. 255-260

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抄録

この総説では,(1)陽イオン界面活性剤と直鎖アルカンの混合吸着膜の相転移が泡膜の分離圧に与える影響1,2)と,(2)イオン性界面活性剤,非イオン界面活性剤の混合泡膜の安定性と吸着膜組成の相関3,4)について解説する。(1)の実験では,混合吸着膜の液体-固体転移にともない,面内での流動性が低下した陽イオン界面活性剤への対イオン吸着が促進され,不連続な膜厚転移が起こることが示される。実験(2)では,イオン性界面活性剤と非イオン界面活性剤の組み合わせを変えて泡膜の安定性を比較する。ほとんどの場合,非イオン性界面活性剤の膜組成が70-80%を超えると,電気二重層斥力が低下して短時間で泡膜が破泡する挙動が観察されるが,吸着膜内での界面活性剤間の相互作用が大きい場合には,溶液組成に依らず膜組成がほぼ一定となり,高い膜電荷が維持されることで泡膜の安定性を大きく向上させることができる。総説の最後には,我々が最近取り組んでいる臨界ミセル濃度より高い濃度条件で,熱力学的に膜組成を評価する方法と,洗浄のように希釈過程で連続的に膜組成が変化する状況への応用について紹介する。

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