抄録
白金族元素の一つであるオスミウム(Os)の放射性同位体(187Os/188Os)比の高精度・高確度分析には,化学分離操作に伴うブランクの低減が最重要である.本研究ではICP-QMSによるスパージング法を適用し,Osの分離濃縮に使用する各種試薬のOsブランクを測定することにより,その起源の特定を試みた.その結果,主なブランク源は岩石粉末試料の分解の際に使用する硝酸と環境中に浮遊して存在するOsであることが判明した.硝酸については,硝酸の酸化剤としての性質を生かした高温での蒸発や窒素や空気のガスを通じつつ加熱を行う方法で硝酸内のOsを揮発性の高い四酸化Osとして除去し,Osブランクを半減させることができた.環境中のブランクについては,実験室の空気圧をあげることでOsを多量に使用する他の実験室からの空気流入量を制限するとともに,溶液の蒸発乾固を閉鎖環境で行うことなどで試料への混入を最小限にとどめた.これらの結果,現在では数pptレベルのOs分析が可能になるほどOsブランクを減少させることが可能となった.