医学検査
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症例報告
偽性高クロール血症から慢性ブロム中毒の診断に至った2症例
津田 真莉子梅木 満鈴瀬田 遥香後藤 大尚鍵尾 真実濵﨑 浩一松田 翔平面田 恵
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2024 年 73 巻 3 号 p. 560-565

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抄録

現在,血清中および尿中の電解質測定においては多くの施設でイオン選択電極(ion selective electrode; ISE)法が採用されており,ナトリウム(Na),カリウム(K)測定用のISEはクラウンエーテル膜電極であり,特異性が高く共存物質の影響は少ない。クロール(Cl)測定用のISEは4級アンモニウム塩電極,銀-塩化銀電極であり,特異性がクラウンエーテル電極に比べて低く,他のハロゲン物質が共存することで偽高値を呈する場合があり,過去にいくつかの報告がある。今回血清Clが偽高値となったことから市販鎮痛薬の長期服用による慢性ブロム中毒と診断された症例を2例経験した。本2症例のような市販鎮痛剤による偽性高Cl血症を示す患者は他にも存在すると思われ,臨床検査を担当する臨床検査技師および診療側は注意を要する。Cl測定において,Na値とCl値とのバランスでClが高値の場合,分析装置からのエラーが出現した場合に共存物質によるCl値への正誤差を疑った場合は,臨床側に連絡し患者内服薬の確認,臨床症状との関連性をみることで,ブロム中毒の発見に繋がる。

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© 2024 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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