JAMSTEC Report of Research and Development
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報告
表層漂流ブイを用いた北極海の渦・海洋循環に関する研究
-「みらい」北極海航海MR13-06での試み-
川口 悠介西野 茂人
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2014 年 18 巻 p. 29-39

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抄録
「みらい」北極海航海MR13-06において,海洋の流速を捉える漂流ブイ観測を実施した.この観測では,おもに北極海のカナダ海盆とチャクチ陸棚域における流速場の調査を行った.カナダ海盆域では,XCTDとADCPを用いた事前調査において西向きジェット流とそれに捕捉された傾圧渦の構造を発見し,それらの挙動を明らかにするべくブイを用いた追跡調査を行った.この観測から,ボーフォート循環南端のジェット流は陸棚斜面に近い流路を取り,従来考えられていたノースウィンド海嶺を北上するルートではなく,海嶺を横断し陸棚水を西に運搬するという新たなルートの存在を明らかにした.渦に投下したブイの軌道からは,直径約40 kmの渦が時計回りに回転しながら海盆内を西方に移動する様子が捉えられた.ブイの位置情報に基づき約20日後に渦の再調査を行った結果,渦の亜表層では水温が1℃以上も上昇していることが確認された.チャクチ陸棚上の定点観測では,ドローグを15 mと40 m深に設定し,鉛直二層構造の海洋流速を捉える観測を行った.この観測によって,慣性振動や吹送流によるシア流の影響を捉えることができた.また,「みらい」を用いて同じ海水の再調査観測を実施することで,水塊のラグランジェ的な変質過程についても調査を行った.
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© 独立行政法人海洋研究開発機構
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